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明日の風の吹く場所

黒子のバスケにハマっています。
主人公たちよりも、脇役とか敗者に感動して涙が溢れ出てきます。
漫画で泣いたのは鋼の錬金術師以来でしょうか。

藤巻先生はどんどん絵が上達しています。すごい。
本誌で読んでいたときは「あ、これコミックで読むべきだ」と思っていたのですが、コミックを買ってみたら「あ、やっぱりこれコミックで読むべきだ」と思いました。
この作品、個人的に演出が好きだなと思ったりしています。あと言葉に重みをもたせるのが上手なので尊敬してたりします。こう、グッとくる。


そういうわけで今日のピーター。
 呼び声を聞いたとき、少年は自分が一体どのような状況にあるのかわからなかった。
 記憶を掘り起こしてみれば、暗闇に引きずりこまれた瞬間で途切れている。叫びを上げたことを思い出して、少年の脳はめまぐるしく動き、ようやっと現状を理解しようと努め始めた。
 上半身を起き上がらせた振動に耐え切れず左手をついて、少年は揺れる思考のなかでやっと周囲を見回した。
 昔は白かっただろうシーツが敷かれた簡素なベット。あまり広くない――個室のような部屋。ベットと灰色の壁にかかった同色の厚いカーテン、部屋の片隅にある小さな木製の棚。自分がどこにいるのか、状況を理解するには材料が足りなかった。
「目が覚めたかい? おはよう」
 若い男の声が聞こえ、少年は反射的にそちらを振り返った。少年の視界には、人好きのする笑みを浮かべた白衣の男が立っている。
「おはよう……ございます」
 人好きする笑顔に少年は僅かに怖気づく。こんなところで笑みを浮かべる人間に良い人はいないと少年は信じていた。もしかしたら助けてくれたのかもしれない。けれど。
 ――見ず知らずの人間を容易く助けるような人間に良い人間なんて。
「大丈夫かい?」
 心配げに伸ばされた手を見て、咄嗟に少年は体を引いた。
「あ……ごめんなさい。え、と……助けてくれてありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。ここは――どこですか?」
「あれ、覚えてないのかい?」
「はい?」
 怪訝な顔をする少年から手を引いた若い男は、くすりと笑って白衣を揺らした。ベットへ背を向けて部屋の片隅にある木製の棚へ向かう、その行動を少年は不可解に思った。
 何かがおかしい、と少年の肌が訴えている。
 意味のわからないことに対して栗立つ肌は、少年の視界をクリアにさせた。心の中で呟くのは、急げ、考えろ、の二つの言葉だった。
 何かがおかしい。
 何がおかしい?
「覚えていないのは無理もないと思うけど……僕としては少し寂しいかな」
 若い男は寂しそうな表情をして、木製の棚の前でひざまづいた。70センチほどの高さの棚には引き出しが3つある。一番上の引き出しをあけて、中に入っていたものを取り出した。
「……あの……?」
 戸惑いが少年の口から漏れる。
「まあ、でもきっと大丈夫だよ。すぐに思い出すから」そう言って若い男は、棚から取り出した拳銃を米神に当てた。「でも嬉しいな。君にそんな顔させることができるなんて」
「待って!」
 少年の制止の声などまるで最初からなかったかのように、白衣の若い男は引き金に当てた指を容易く引いてみせる。
 パン、と乾いた音が部屋に反響した。


Title of "In the unknown room."
to be continude...?

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