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いちご牛乳とうどんの時は金なり運動

お久しぶりです翼です。
ツイッターに依存しすっかりブログを放置してしまっていますorz
リアタイでライフログとれるともう、アレですね。便利ですね。
じっくり自分を見返す時間はなくなっていますが。

そんなわけでまたも友達から3つほどキーワード拝借。
いちご牛乳と、うどんと、時は金なり。  学食で鍋焼きうどんを食べながら親友は言った。
「だからさーわかる? さくっとやってさくっと次! 大事なのはコレっしょ」
 湯気を立てる鍋焼きうどんは、まず初めに海老の天ぷらを失った。半分かけたかまぼこはともかく、残ったしいたけとほうれん草が自己主張しようと躍起になっているように見えた。
「そうだけど……」
「あぁん? グダグダ言ってると殺すぞ」
 そう言って親友は鍋焼きうどんの汁をすする。ずずず、と下品な音と立てる彼のそういうところはひどく、らしい。黒くて短い髪に銀色のリングが耳に連なる。黒いシャツに、黒のズボン。そして手首に絡まるドックタグ。
「そうだけど……」
 僕は同じ台詞を吐く。悩みごとは何度でもぐるぐると頭の中を回る。輪廻みたいだ、なんて思ってまったく別ものだと思考を払拭する。
 ストローを加えて吸い込めば、いちご牛乳の甘ったるい味が口内に広がった。
「だいたいお前はどういうトコがダメなんだって言ってんだろうがよ。いつもいつもトロくせえしやることなすこと中途半端だしよ」
 物を口に入れたまま喋るなと、最近担当教諭に怒られたばかりだったのに。親友はずるずるとうどんをすすり、咀嚼し、そのまま喋る。すっかりくせになっているのだろう。そういうところで生きてきたのだから、仕方ないとは思うけど。
「……でも下品だ」
「あ? なにがだよ」
「物を口に入れたまま喋るなって、鮎川先生が言ってたよ」
「知るかよ。んな暇ねーっつーの。なんつったっけな、時に金なる?」
「なに?」
「時は金なる?」
「時は金なり?」
「それだよ」親友はずず、と汁をすする。ほうれん草を食べて、うどんを食べ、しいたけを残した。「時は金なりっていうだろ! お前みてると時間がたもったいねえってスッゲー思うんだよ、俺は。だいたいよ、なんでやることやるときだけあんな一瞬なのに、やる前とか普段とかそんなトロっくせーわけ?」
「それは……」
 それは僕にもわからない。おっとりしていると他人から評価されることはあるので、それが原因かもしれない。
 もしくはいつでも悩んでいるか、だ。
「時は、金なり……」
「そうそう。いつまでもその場でとどまってても成長しねーぞ」
 カランと箸が置かれる。空になった鍋に、しいたけがひとつ。僕はそれを見ながらストローをすする。甘い。
「ん」
「え?」
「一口」
 親友が差し出した手にいちご牛乳を渡す。親友は肘をついた姿勢でまた、ずずず、と下品は音を立てておそらく淡いピンク色をしているだろう液体を嚥下した。上下した喉の膨らみを見ながら、僕はやっぱり迷う。
「そうだけど……」
「あーもうウゼエな!! さっさとやってしまえつってんだよ!」
 苛立った声で親友は怒鳴り、落ち着かないと言いたげに膝をカタカタと揺らす。耳についたリングが揺れ、その目は僕に向けられる。
「だから言ってんだよ。時は金なり、一秒でも無駄にす」
 親友の薄い唇の隙間からいちご牛乳が漏れ出した。淡いピンク色だと思っていたその液体は想像に反して赤く、よりいちごらしい色をしていた。
「ありがとう。やっぱり君に相談してよかった」
 横に振ったナイフを下ろして僕は微笑む。親友は何かを言いたげに僕を見上げ、喉からいちご牛乳を吹き出すと、真っ赤に染まる喉を押さえて椅子から倒れてしまった。
 親友の口元から漏れ出した液体がひどく赤いことに気付き、僕はふと気付く。こんなに赤いのは、いちご牛乳ではありえないはずだと。
 しかしながら、僕の悩みの種は親友の命とともに消えてしまった。親友は時は金なりという名言を残しこの世を去ったのだ。
 僕と親友を見ていた近くの女子生徒がなにごとかをひそひそと囁く。その内容までは聞こえないけれど、きっと「どうしてこんなところで」とかそんなことを言っているんだろう。
「……話を聞いていたんだけどさ」
 僕が親友から視線をあげると、ひとりの男子生徒が倒れている親友をまたいで定食を運んでいるところだった。赤い水溜りの中で靴が汚れるのに眉を潜めて舌打ちをして、そうしてやっと彼は僕を見た。
「たしかに時は金なりっていうけどさ。彼を殺すか殺さないか悩む時間よりも、彼と過ごす時間のほうが高価だったんじゃないかな」
 そう彼は付け足して肩をすくめる。
「ま、実際のとこはわかんないけど。でも少なくとも、あなたはもっと悩むべきだったね」
 言い終わると、彼は何事もなかったかのように歩き出す。すぐに開いている席を見つけ、椅子に座った。
 僕は視線を親友へと戻して、親友が言った言葉を反芻する。
『時は金なり』
 もしも親友がいきていたら、親友と過ごす時間は一体どれほどの価値を持つことになったのだろうと考える。
 けれど、もう遅いのだ。時は金なりとは言っても、金で時は買えるものではないのだから。
 ならば考えるのはよそう。親友が残した言葉を胸に、僕は右手に持っていたナイフについた赤いそれを左手の袖で拭った。
 時は金なり、だ。はやく報酬と受取ってしまおう。
 そう思って、僕は足早に食堂を後にした。


end

前にpixivで見た企画ものをちょっとっろパk お借りしました勝手に←

設定としては殺人訓練学校の食堂の1コマ、みたいな話。
前にもっと年齢低くて同じような話を書いた気がしますが、あれはpixivさんのほうはまったく関係ありません。
ていうか殺人鬼養成学校みたいなものはよくある設定かな。

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