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そして結末への道は拓かれる。

 箱の中身は、絵本だった。
 黒いもやもやとした煙のなかで、絵本がひとつ、箱の中に収まっていた。
 予想外のそれに私は一瞬事態が把握できず、引き寄せられるように見覚えのない絵本を手に取る。
 ふと、その絵本のページになにかが挟まっていた。
「…………」
 灰色の紙片。それを指で引き抜くと、そこにはこんな文字が躍っていた。

『号外! 号外! 白ウサギの真実! アリスが忘れていた衝撃の事実!』

 一面を飾るその文字。
 折りたたまれて絵本の間に挟まっていた新聞を、おそるおそる開いていく。
 ――カツン、とハイヒールの踵が鳴る音がする――。
 新聞に載った文字が蠢いている。チェシャ猫の容姿について、白いウサギの嘘について、卵の殻を着た双子とダンの関係について、芋虫の持つパイプから出る煙について、母の優しさについて、カエルの公爵とカエルの公爵夫人について、トランプの女王候補について、薔薇の色について、ブタに似た太った婦人の料理について、黒い兎の狂気について、トラックの速度について、キリギリスの館の秘密について、人の死について、父の最期の言葉について、私の叫んだ声がどんなだったか、私の見た光景について、白いウサギの優しさについて、叔父がしてくれたことについて、黒い兎の常軌について、世界の果てについて、現実と夢について……紙面の一角には、未だチェシャ猫を探す記事が出ている。
 私は顔を上げて、こんなことを言った。
「あなたはここにいるのに」
 チェシャ猫にしてみれば、私が突然わけのわからないことを言い出したように見えるだろう。なのにチェシャ猫はにんまりと笑って、
「チェシャ猫はどこにでもいるし、どこにもいないよ」
 地獄の業火に焼かれる罪人の悲鳴のような声でそう言った。
「ダカラ、ドコニデモイルンダヨ」
 感情の篭らないその言葉に、不思議と安心した。どこにでもいないし、どこにでもいる。そうだ、それがチェシャ猫だ。
 だから、きっと、いなくなったりしないのだろう。
 なら、安心だ。
 ――カツン、と踵を鳴らす音がする――。
 私はほっと息を吐いて、頬を緩ませた。
 箱の中にある絵本を手に取る。ボロボロで汚くて、幼児が描いたような絵が微笑ましい、手作りの絵本だった。表紙にも裏表紙にも、なにかの動物を形どったような紙が貼られている。緑のや、黒、白の、なにか。
 私は表紙をひと撫でして絵本を開いた。
 覚悟なんてしなかった。心構えなんて考え付きもしなかった。すぐ前に読んだはずの新聞の記事も、そこに載っていた写真も、すべて忘れていた。
 ――カツン、と踵を鳴らす音がした――。
 やはり私は忘れっぽい。


Tittle of "It's her wonderland."
to be continude...?
*****
うおおおもうすぐかもしれません!


そういえば昨日右の手首を切りました。

右足の小指の爪で。

意味がわからないと思いますが、僕も意味がわかりません。
足を拭こうとしただけでなぜ手首から微少とはいえ出血することになるのかと。

ではでは、今年度もありがとうございました。
来年度まであと1日。さらば、今日よ、明日は明日の風が吹け。

ではでは。

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