ボーカロイドなパラ☆ダイス

　右手には、鍵があった。
　トランプの女王が抱えるほどの大きさだったそれは、不思議なことに小さな私の手のなかに収まっていた。
　私は銀色に光る鍵をそっと鍵穴に差し込む。回すと、カチリ。音がした。
　けれどその箱にぐるぐるに巻きついた鎖が箱の口を開くことをよしとしない。ハンドメイドのような木箱は、チェシャ猫が抱えたその箱は、まだ開いていない。
「怖いかい？」
　チェシャ猫が私に問いかける。
「……怖いことなんてなにもない」私は答える。「そうでしょう？」
　振り返って見れば、帽子を被った白いウサギ耳の少年が、柔和に微笑んでいた。赤く染まったままの唇で描かれた弧は、悲しさに濡れていた。笑っているのに、彼の柔和な微笑みは安らぎでなく切なさを私に与えた。
　音もなく胸が軋んだ。
　微かに訴える胸の痛みを奥歯で噛み潰して、私は見なかったことにした。
「青い薔薇の花言葉を覚えているかい？　アリス」
　チェシャ猫が問う。
　私はチェシャ猫に向き直り、考えた。よく頭が足りないといわれる私だけれど、これを思い出さなければ箱は開かない。ならば、思い出すしかないのだろう。
　波打つ地面の底のように、自分でも底の見えない記憶から、なんとか拾い上げないといけない。それは私の使命のように思えるし、義務のようにも思える。
　だから、私は記憶を掘り起こす。
　白ウサギとの楽しい会話、ブタに似た夫人の焼いた美味しいクッキー、最低な帽子や、適当な芋虫の返答、襲いくる卵の殻を着た双子の刃、厳しいトランプの女王、綺麗なカエルの公爵夫人、キリギリスの奏でるヴァイオリン、意地悪なブラックラビット、トランプの兵隊によって染められた赤い薔薇。
　……赤い薔薇？
　違う、それは不思議の国だ。
　それはお話のなかの出来事だ。クロケーをやるトランプの女王は絵本のなかの話で、私が見たのはいつも不機嫌そうに廊下を歩くトランプの女王だ。彼女はチェスが趣味だった。白い指で駒を動かし、私に一度も勝たせてくれない。
　混同している。不思議の国のアリスは、彼が語ってくれた物語だ。
　…………そう、そうだ思い出した。白い薔薇じゃない、赤い薔薇でもない。
「私が……見たのは……」
　庭園一面に咲き誇る、青い薔薇。
　むせ返るような芳香。その花の持つ意味。
　トランプの１１はジャックと名乗った。ジャックが持っていたサーベルは、彼がよく青い薔薇の茎を切るのに使っていたのだ。記憶の中で、彼は断ち切るように剣を振るっていた。
　なにを断ち切るのか、なんてそんなのはわかっている。
　否。
　なにを断ち切っていたのか、なんてそんなのは知っていた。
「青い薔薇の花言葉は――」
　そこで一瞬だけ迷った。
　その言葉を軽々しく口にしていいものなのか、一瞬だけ考え、次の一刹那でそのことを忘れた。私はいつまでも忘れっぽい。
「――それは、」
　彼が話してくれたのだ。品種改良によって人工的に生み出された青い薔薇の花言葉は『奇跡』、『神の祝福』、『夢かなう』、そして、
「”不可能を可能にする”」
　途端、ガラスが割れるような音がした。
　私は驚いて身を竦ませた。けれど音に反して、その音を発したであろう銀色の鎖はチェシャ猫の手の中でさらさらと、それこそ角砂糖が紅茶の中で溶けるようにさらさらと、流れて消えた。
　ゆっくりと、箱が口を開く。

To be continude...?
Title of "Pandora's box opened."
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ボーパラいってきました！！
今回は地元だし2回目だして気負うことなくラフにでかけていったのですが、家を出るのが遅くなったのはともかくとして、行き方をちゃんと探して見たにもかかわらず、乗換えで電車を間違え逆行、駅を出てからも道を間違えけっこう余分に歩くことになりました。
地元なのにorz
でも東山はアウェイなので。という言い訳はともかく、なんとかついて会場も入れ、お目当てのサークルさんにもいけて色々な方をお話ができてとってもとっても楽しかったです。
動画師さんスペースは基本として、クリスタルPさんやぼーかりおどPさんなどのスペースでにいけてCDが買えてよかったです！
おどPさんの「マーキュリー」がいまマイ大ブームなのです（´ワ｀*）

ロンリー参加だったのでアフターなどはなく、まっすぐおうちに帰ったのですがひどい頭痛にうなされる羽目になったのでアフターとかなくてよかったと心底。
戦利品ほくほくしながら楽しみます。


そういえば、新しくデスクトップPCを買いました。23日に。
ソフマップでバーガーパソコンといってスペックごとになんとかバーガーっていう名前付けて売ってたので、そのなかのビッグバーガーを選びました。FF１４ができるらしいです。しないけど。
立ち上がりが気持ち悪いほどはやくて画面も綺麗でハイスペックってすごいなあと実感。動画視聴が驚くほど快適です。ハイ。

ではではこの辺で。
しもやけとあかぎれに苦しむ翼でした。

明日もいい天気でありますように。