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定型化されたエンターテイメント

「世界の果てでチェシャ猫にウサギを会わせてはいけない」
 そう言われたのはいつだったか。
 覚えている。覚えていた。あれはたしか、誰も居ない家にいるのが嫌になってブタに似た婦人と話をしたあと、黒いウサギとかくれんぼをしている最中だった。
 ミニチュアの家の扉を開き、中に兎がいないかと探していると、どこからか声が降ってきた。
「アリス。アリス。かわいいアリス」
「え?」
 どこから声が出ているのかわからなかった。キョロキョロと、声の主を探すと、上だ、上だ、と声がする。声に従い顔を上げてみれば、タンスの上にちょこんと目覚まし時計が乗っていた。
「アリス。アリス」
「なあに? あなた、誰?」
「時計さ。時計。見ればわかるだろう?」
「目覚まし時計が私の名前をどうして知っているの?」
「みんな知っているさ。アリスのことは、みんな知っている」
 どうして私の知らない目覚まし時計が私のことを知っているのか不思議になった。けれど、学校でも私の担当でない先生が私の名前を知っていたし、青い制服を着た警察の人も私の名前を知っていたから、そういうものだろうと私は思った。
 私の知らない人が私の名前を知っていることが、不思議なことではないのだと。
「それよりも、それよりもだアリス。君は誰を探しているんだい?」
「黒のラビットよ。いつもいじわるなところに隠れちゃうんだから」
「ブラックラビットか。そうかブラックラビットか。アリス、白ウサギとは遊ばないのかい?」
「白ウサギはどこかへ行っちゃった。だから黒のラビットと遊んでいるの。黒のラビットは白ウサギがいないから出てくるのよ」
「白ウサギがいないとブラックラビットがでてくる。ふむ、白ウサギがいないとブラックラビットがでてくるのか。そりゃそうか。ウサギは兎だものな。兎はウサギだものな」
 時計は無機物なので微動だにしない。
 けれど声でなにか考えているのはわかった。
「なにかおかしなこと?」
「アリス。アリスよ。白ウサギとブラックラビットが一緒にいるところを見たことがあるかい?」
「そうね……たまに、あるわよ? あのふたりはいつもケンカばかりするの」
「喧嘩か、喧嘩をするのか。そこにチェシャ猫が混ざったりするかい?」
「どうしてチェシャ猫が出てくるの? チェシャ猫はそもそも黒のラビットのいるところにも、白ウサギのいるところにも姿を現さないわ」
「そうか。そうだね。アリス、いいことを教えてあげよう」
「いいこと?」
「アリス。アリス。君は自分が大事かい?」
「もちろんよ」
「なら、世界の果てに行ってはいけないよ。世界の果てでチェシャ猫に白ウサギを会わせてはいけないんだ。わかったね」
「……どうして? 黒のラビットならいいの」
「ブラックラビット。ブラックラビットか。彼はチェシャ猫と似た考えだからね、いいんだよ。ブラックラビットとチェシャ猫が世界の果てに居合わせることがあったら、それはきっといいことだ」
 だが、と時計は言う。
 身動きひとつせずに。
「反対に、反対にだ。もしも白ウサギとチェシャ猫が世界の果てに居合わせることがあったら、それはもしかしたら君にとってよくないことかもしれない」
「よくないこと……?」
「そう。そうだ。よくないことだ。だから、いいかい、アリス」
 カチ、カチ、と。
 そこで初めて、私は時計が時を刻む音を聴いた。
「世界の果てでチェシャ猫に白ウサギを会わせてはいけない」
 その言葉を久しぶりに聴いた。
 否、正しくは思い出したのだ。群集の時計の前に、その言葉を初めて聴いたその時を思い出した。
 私がいまより幼かった頃。この不思議な世界で楽しく過ごせていた頃。
 トランプの女王が、ただひとつの存在だった頃。
 白ウサギがいて、黒のラビットと遊んでいた頃。
 この世界での思い出が次々想起されていくなか、突然強く腕を引かれた私は水面へと引き上げられた。
 そして私を強く強く抱きしめたのは、予想通りの人物だった。

Title of "Key of memories."
to be continude...?
*****

誰であっても予想通りになる件について僕はなにも言いません。
一度全部書き直すときに思い出のなかのアリスの口調直すべきかな。ひらがな多めに。

MMDのread meをコピペして自分専用の取扱説明書を作ってました。半日くらい。
午前中は8時半に起きたので『男たちの晩歌』を観に京都駅近くの映画館へ。
立命館大学の映像学部が卒業制作の上映展示をやっているそうで、今日は上映のみだったそうですがちょっと興味があるので、明日お寺の打ち合わせがはやい時間に終わったら行ってみたいと思います。


ではでは、お風呂入って洗髪を終えてきます~。

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