「Where were you?」 耳に届いた言葉は理解不能な外国語だった。 振り返った先――カリブの海賊のような男を探したのに、ジャックの後姿はすでに遠ざかっていた。ふたつの店の間を向けて、巨大怪鳥の待つバスターミナルへ歩みを進めている。 「Hey,Where you are ?」 私は顔の向きを正面へ戻し、黒色の眼鏡をかけた男に視線を向ける。 「ええと……あの……ここ、です。えーっと、Here」 お前はどこにいるのかと尋ねられれば、ここです、としか返せない。しかし目の前の美丈夫は首を傾げて言う。 「I can't speak you are country」 いまいち通じない。これはもしかしてあれだろうか。観光客が観光に行った先で無理矢理その国の言語で話そうとするが、文法や発音が間違っている為に通じないとかそういうのだろうか。 私はしばし考え、考え、考えた末に言葉を決めた。 「……警察を呼びましょうか?」 「Nooooooooooo!!!!!!!!」 …………。 ――心臓が。止まるかと思った。 「よ」 と、耳に聞こえたのは自分の声だった。 「呼びません! 呼びません! 呼びません!」 人は、あまりに驚くと頭で考える先に口走っているものなのかもしれない。 私の台詞に、サングラスの美丈夫は見る見る脱力した。そうしてああ、と声を漏らすと少しずれたサングラスを押し上げ、漏れるのはため息。 「Oh...」 私は次の言葉を待った。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………あの」 次の言葉がなかなか来ない。私は不思議に思って恐る恐る声をかけたが、返事はなかった。 「――……あ」 サングラスの向こう、美丈夫の瞳を覗き込んだ私は、閉じられた瞳と 形良い唇の隙間から聞こえる寝息に気付き、初めて彼が眠っていることを知った。
Title of "The beautiful man of the sleep." To be continude...? ***** 久しぶりのアリス。 いま書いておかないと次いつ書けることやら(汗 むしろ前回の話を覚えている方がどれほどいらっしゃるか・・・ていうかいい加減HPに転載できてない分を転載しなければ、だ。すみません、いつも気まぐれでorz