手をあげて、言って。そう、声高らかに。 キリギリスの館は私の想像をはるかに超えて広かった。消失点を見つめたまま伸び縮みする如意棒を持った甲冑の間を五キロほどいったところで、まず最初にへばったのは私だった。「もう嫌……」 前にも思ったことだけれど、私が履いているエナメルの靴は運動には甚だ不向きだ。靴擦れを起こしてしまった足をさすって床に座り込むと、帽子を被ったウサギは困った風に笑いかけてきた。「大丈夫かい?」 帽子ウサギはいつも口先だけのような気がする。「駄目。もう歩けないわ」 柔和に笑うその顔に弱音を吐く私を三月兎が面白そうに覗き込んで、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべる。何、と語尾を上げずに尋ねると、三月兎は別にと言って笑みを絶やさぬままに顔を背けた。実に気分を悪くしてくれる男だ。「アリス、歩けないの?」 座り込む私の隣で、ダンが目線を合わせて訊ねてきた。小首を傾げるダンに、ごめんなさいねと言ってわざとらしく足をさする。「あまり歩き続けると、足が棒になっちゃうの」「ふうん……」 ダンは呟いて私の足を凝視した。考え込むようなダンの視線が気になったが、視界に入ってきたダンの頭を撫でる帽子ウサギの手があまりに白くて、すぐにダンの意味深な呟きは霧散してしまった。 ウサギは宥めるようにダンの頭を撫でながら、何かを彼の耳元で囁いた。「――そうだね、アリスなら……うん、そうだね」 頷きひとつ、ダンが顔を上げて私を真っ直ぐに見つめてきた。双子の目と同色の色彩を持つ瞳が、ガラス玉の如くそこに埋まっているのはなんだか不思議な感じだ。意味深な頷きの文句をダンの顔面に埋まったガラス玉を見つめ返すことで受け流して、私は違う方向に思考を向けた。帽子ウサギの台詞には、聞いて得することなんてひとつもないに違いない。「さあ皆、そろそろ行こう。あまり長く休憩していると、足元から腐ってしまうよ」 ウサギが軽く伸びをしてそう言った。ウサギの真似をして伸びをするダンが背を向けてガラス玉が見えなくなる。残念だ、なんて思わなかった。「アリス」 名前を呼ぶ三月兎を見上げて、そこに浮かぶにやにや顔に眉を顰める。何を言うつもりなのかと身構える前に、三月兎は私の肩に手を置いて耳元に口を近づけた。「足なら大丈夫だぜ」 そうして離れていく表情は、帽子を被ったウサ耳の少年によく似ていた。首を傾げる私に指先を動かして「立て」と指示する。その仕草も表情も一切が気に食わなかったが、三月兎の言うことは真実だった。立って、軽く足を動かしてみれば、靴擦れの痛みも足の疲労も、不思議と消えてしまっていた。「貴方がやったの?」 訊ねれば、三月兎はいつものにやにやとした笑いに肩を竦めるだけだった。「俺かもしれないし、俺じゃないかもしれない。大体において必要なのは結果であって、原因も要因も、誰がやったのかということも大して重要じゃねえよ」 そう言ってニヒルに笑い、三月兎は顎でウサギとダンを示した。見れば、双方共に、反対側に向かって歩き出している。私は慌てて二人を呼び止めようととして、ふと血の気が引いた。「あれ?」 後ろにダン。前には帽子を被ったウサギ。しかしどちらも同じ景色。 はたして、私たちはどちらに向かって歩いていたのだったか。to be continuede...?Title of "Which is it?"*****久しぶりにアリスー!アリスの面白いとこは、僕自身本当に何も考えないで思いつきで書いてるとこですね。展開が、明日の自分任せ。さて今日のアリスの伏線ははたして回収さっるのか・・・?!(しろよ)えーとですね、今日は学校から帰ってきて寝てました。8時くらいまでがーっと寝て、それからのそのそとかいつどう開始するもすでに3時を回りました。寝なきゃ!寝なきゃ!!(汗あ、そだそだ。明日はパンダ観に行ってきます!ライブライブ!ロック・スターを観てきます!!うっきうきどっきどき!そして今日の父さんの「アンタ、寝ろ言わないと寝ないやろ。それはあかんで」に本気で心臓ドッキバクです。どこまで父さん怖がってるんだ僕は(汗)でもマジで怯えてるのが実によくわかるから、果たしてこれはどうなんだろう・・・orzではでは、おやすみなさい! [0回]PR