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予想外DEATH。

 扉は音もなく閉まった。
 否、ここで音もなく、という表現は不釣合いだ。だからあえて言いなおそう。扉は音がしないという音を立てて、閉まった。
「楽にしてくれ」
 カエルの公爵はそう言うと、その長身から華々しく緑色のゲルを放出させて、書き物をするために部屋の奥に置かれている机へと向かった。ベチャ、という音を立てて落ちた緑色の半透明のゲルは、カエルの公爵が通った道筋にその糸を引く。後の掃除が大変だろうな、なんて関係のないことを思った。
 カエルの公爵の書斎は存外に広く、また存外に明るい。天井は一面巨大なガラスが嵌められ、カエルの公爵が座る大仰な机の向こう側も両開きのガラスの大きな窓がはめこまれている。日当たりはとても良好。だから部屋の隅にぬめったような光を放つゲルに包まれた、カエルの公爵の大切な子供たちが軒並み死んでいくのだが。以前地下に移してはどうかと進言したが、カエルの公爵夫人が「これ以上気持ち悪いものを増やさないで」とそのまま眼を蛇のように吊り上げて怒ったものだから、結局カエルの卵はカエルの公爵の書斎で干からびていく。部屋の隅に眼をやれば、やはりゲルが乾いて見た目もカサカサしているようだった。
 私はカエルの公爵の机の前に置かれた来客用の椅子に腰掛けた。
「アポイントもなく訪ねてきてすみません」
「構わないよ」
 カエルの公爵は額から緑色のゲルを垂らして言った。
「用件はなんだい?」
 整った顔立ちに、緑色をした半透明のゲルが垂れていく。なんともいえない気分だった。
「キリギリスの演奏会への招待状をいただけないかと思いまして」
「キリギリスの演奏会?ああ、ちょうど招待状が届いていたから君に譲ろう」
「ありがとうございます」
「ただ……替わりにと言ってはなんだが、ゴディバが私の事をどう思っているのか聞いてきてもらいた」
「キモい、だそうです」
 私はカエルの公爵の台詞を遮った。最早聞くまでもなく、とはまさにこのことである。カエルの公爵夫人は常々(本人の前でも影でも)カエルの公爵のことを口を開けば「キモい」だの「喰い殺したい」だのと宣っている。
「そう、か……」
 カエルの公爵夫人には聞くまでもなくだが、カエルの公爵に関しては最早見るまでもなく、である。顔中を緑色のゲルが覆い隠しそうになっているカエルの公爵夫人は、失恋に震える指でキリギリスの演奏会への招待状を差し出した。
「どうしてもゴディバは私を好きになってくれないのかね……」
 すこしゲルが付着している招待状を受け取りながら、私は首を傾げた。
「蛇と蛙ですからねぇ……」
 個人の感情どうこうよりも、捕食する側とされる側の関係性の問題ではなかろうか。
 そもそも、カエルの公爵夫人がカエルの公爵夫人となったのは、カエルの公爵夫人(当時はただの蛇女だった)がカエルの公爵を喰おうとした際にカエルの公爵に一目惚れされたのがきっかけだったと聞いた。カエルの公爵夫人(当時ただの蛇女)の美しさに心奪われたカエルの公爵は周囲の猛烈な反対を押し切りカエルの公爵夫人と結婚。一方のカエルの公爵夫人はというと玉の輿にのれるのでこれ幸いと婚礼を受け入れたが、カエルの公爵のあまりの両生類っぷり(つまりカエルの公爵が放つ臭いや身体から放出される緑色の半透明のゲル等である)が心底嫌になり、しかし玉の輿の今の生活を捨てきれることもできずに日々世界を悠々と旅して回っている、ということだ。
 つまるところ、カエルの公爵の完璧な片思いである。
 ああ、悲しきかな、人生。
「では、私はこれで失礼します。卵の双子を待たせていますし……招待状ありがとうございます」
 私はそう言って頭を下げると、またおいでと微笑む――しかし頭から流れ出るゲルで顔がまともに見えなくなっている――カエルの公爵に背を向けた。
 扉に手をかけたところで、私はそういえばと思い出したことがあったので振り返った。
「どうしたんだい?」
 視界が悪くなったのか、カエルの公爵はハンカチで顔を拭っていた。しかし止めどなく流れるゲルはまたカエルの公爵の顔を覆った。ふと、カエルという生き物はみんなこうなのだろうかという疑問が湧いたが、カエルの公爵の弟君は無闇にゲルを放出しないことを思い出して疑問は即解決された。きっとカエルの公爵だけが特別なのだろう。
「いえ、なんでもありません」
 首を取ってこいと言われた、なんて言ったらますますカエルの公爵はカエルの公爵夫人に怯えるに違いない。知らぬが仏、という言葉もあるのだ。知って損するより知らずになにもないほうが徳というものだろう。
「それでは、失礼します」
 書斎を出て一礼してから扉を閉めた。
 その瞬間、私は落ちた。


Title of "Green semitransparent gel."
to be continuede...?
*****
長い(笑

こんばんは、いやすでにおはようございます。
4時を回りました。あくまでもおはようございますで通そうと思います翼です。

キャバクラ嬢というものが予想外に儲からなくてすこし驚き。
今日の日払いは630円でした。なんだこれ。10時入って1時半に帰って。3時間半いて、630円。なんだこれ。
髪型がいちいち面白いことになるのは楽しいけども。
普通のバイトを探そうと思います。真っ当に生きましょうか、人生。

今日は同じキャバ嬢の友達とちょっと話しました。
僕も恋がしたいなぁ。 緑色の半透明のゲル。
緑色のゲル。

・・・これで「ハウルの城」の某ワンシーンを思い出した人がいたら握手してください(笑)
オマージュと言い張りたいところですが、今回のはハウル思い浮かべて使ったので完璧にパクリです。ハイ(ぉぃ
せっかくカエル公爵がね、美形って設定だったからね、使ってみた。ゲルのおかげで美形台無しですけれど。
ハウルのはなんか・・・思念の塊?みたいなものですが、カエル公爵のは完璧なる分泌液です。生理的なもんです。あの一族は出してしまいます。カエル公爵みたいになりふり構わず放出する人はいないと思いますが。

なんていう裏話。
ゴディバさんがカエルの公爵を嫌いな最たる理由はこのゲルじゃないかと。

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