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桜散り散りに散り

こんにちばん、翼です。

映画『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』を見てきました!!!
いやーやっぱ神山監督サイコーっすわあ><*

アニメの攻殻機動隊2ndGIGをちゃんと見ずにいったのですが、それでも十分楽しめる作りになってました。
話の内容も僕程度の頭でも理解できるやさしさプライスレスです。
ただやっぱり後半になるにつれてキャラクターの発言を理解し飲み込むのが大変になってましたが(笑)
タチコマはやっぱり単語の選択が難易度高い・・・。

あとTjoy京都でみたので、映画館のカフェで攻殻メニューも堪能してきました!
天然オイル飲みましたよ!ジンジャーエール(本当にジンジャーでした)にマシュマロがみっつタチコマみたいに入っている仕様。かわいく美味しかったです。


やっぱおやすみいいですわー!最高!
明日は夜バイトなので今日だけフリーでした!わっしょい!
ではでは今日はこれと追記の突発文にて終了です。

おやすみなさいませ。
明日はいい天気になりますように。  

「落し物だよ」
 そう言って私の落としたリンゴを拾ってくれたのは、金の髪をした少年とも少女ともつかない美しい顔をした天使だった。何故天使とわかったのかなんて簡単なことで、彼か彼女かわからないその子供には真っ白は翼が生えていたからだ。
 ただし、片方だけ。
 左肩の向こう、(おそらく肩甲骨だろう。そこが翼になると聴いたことがある)左翼があるはずのそこにはぽっかりと空いた空間が存在していて、よく見てみれば子供の足もとには血だまりができていた。びっくりして背中を覗き込むと、左の翼は根元近くから折れていたのだ。ボッキリと。そうしてその醜くがたがたとした断面からは血が流れている。
「い、痛くないの?」
 私の口から出たのはそんな言葉だった。
 すると子供は肩をすくめて「痛いに決まってるじゃない」と言った。

 子供は少年でも少女でもなかった。思い返せば天使には性別がないと聞いたことがある。しかし、翼を片方だけ折られ堕天する天使なんて聴いたことがない。堕天した天使の翼は黒く染まるものだし、なにより能動以外に天使が堕ちることなど不可能なはずだ。
 私は魔法使いではなく錬金術師だったので、人間以外の傷を治す術がわからなかった。だからひとまず鳥類に対して施す方法で治癒を行い、しばらく様子を見ることにした。
 天使は地上が珍しくないのか、とくに出歩くこともなく私の家のなかでぼうっとしていることが多かった。天使は地上で死んだ人間が生前行った善行の多さによって神が道を示し、その道を歩んだものだと聞くから、もしかしたらこの天使には生前の記憶が残っているのかもしれない。
 けれど、日がな一日ぼうっと過ごされては困る。家に連れ帰った私には天使を保護する義務が発生している。しかしながら天使の食生活など知ったことではなく、聴いてみればなにも食わなくても平気だときたものだ。
「じゃあ、天上に果実などがあるというのは真っ赤なウソ?」
「いや、それは本当。むしろ果実しかないね。水分の多いものを神様が好むのか、たんに他の役職天使の好みかは知らないけど、果実ばっかり。まあ、死肉を食べたら穢れるって言われてるから、仕方ないのかもしれないけど」
「じゃあ、食物を摂取することは可能なのね?」
「まあね。口にした果実はみんな精霊となり僕らの力になるんだ」
 排泄器官がないからね、そういう仕組みなのさ。天使はそう言った。だから食べられはするのだろうと理解して、ひとりで食事をするのもなんだかなぁと思ったのでためしにシチューを与えてみた。
 天使は嘔吐し、二日ばかりうなされ苦しんだ。どうやら牛肉がまずかったらしい。
「死肉を食べたら穢れるんじゃなくて、そもそも食べられないんじゃないか」
 先に言っておいてくれよと天使は愚痴愚痴といいながらうなされて、その様子をぼんやり大変だなぁと思いながら私は看病をした。
 それから、天使には果実だけを与えるようにした。けれどなかなか雨の降らないこの季節、果実は高価だ。食べなくとも平気というから与えなくてもいいか、と考えたけれど、それはそれでなんだか人でなしな気分になってくる。
 そんな自分のエゴのために「働かざるもの食うべからず」という文句を勝手に掲げ、天使に家事をさせた。洗濯物を干させたり、皿を洗わせたり。
 さすがに買い物にはいかせるわけにはいかなかったので(あの翼はさぞかし目立つことだろう。私にあったとき、どうしてあんなところにいたのかいまでもわからない)、買い物は自分でいった。果実店の店主に「いい人でもできたのかい?」とからかれた。
 天使はそのうち、地味に私に近づいてきた。
 地味に、というのはそれそのままの意味で、私のプライヴェートな話を遠まわしに振ってきたり、ふとしたときに傍にいたりとか、そういうことだ。けれどその近づき方はあまりに地味すぎて、だんだん面白くなくなってきた。だからひとまずほうっておくことにした。
 天使と暮らし始めて随分と立った頃、買い物の途中で傭兵のアマンに出会った。よく口の回る男で、そのアマンが言うにはどうも天使狩りなるものが最近流行っているらしい。
 誰が言い出したことか、天使の臓物を食らえば不老不死になれるという。神にも等しい万能の力を得ることができるのだという。
 自慢げに話すアマンに、私は脱力とため息しか見せることができなかった。
「仮にも錬金術師の端くれとして言うけど、私は幼い頃から様々な文献を読み漁ってきた。でも、そんなことはついぞ聴いたことがないわ。どこかの馬鹿の妄言ではなくて?」
「実際に天使の臓物を喰らって、ヴェンハレット大佐は力をつけたと聞くが?」
「デタラメよ」
「どうだろうか。その目で確かめたことでもなかろう? しかし俺はヴェンハレット大佐が以前と随分違っているところを目にしている。信じるべきはどちらかわかるはずだ」
 容疑者の鏡、という言葉がある。罪人に鏡をつきつければ動揺して罪を告白するが、容疑者の域を出ない相手に鏡をつきつけても告白を始めないので、真実その容疑者が罪人なのか冤罪人なのかわからない、ということに由来するらしい。
 つまり、本当かどうか不明なものを証明しろというのは無理ということだ。
 笑いながら去っていくアマンを見送り、私は家に走った。パチパチを枝を鳴かせながら熱を放つ暖炉の前に天使はいた。
「無事でよかった」
 私がそう言うと、天使は不思議な顔をした。そしてすぐに驚いた顔をして立ち上がる。
「やはりいたのか」
 背中から聞こえたのはさっき話したばかりのアマンの声だった。
 逃げなさい、と叫んだのと天使が走り出したのとどっちが早かったか。どちらにしろアマンのすばやい動きに天使は易々と捕まってしまった。
「その子を離して! アマン!」
「なんで怪物を庇うんだ?」
 異形のものを。とアマンは吐き捨てたその腕の中で天使は暴れている。けれど屈強な体をしたアマンに敵うはずもなく、あっけなく床に叩き伏せられてしまった。
「やめて、その子は、その子は……」
「天使なんだろ?」
 欲望に染まった目をして笑う。傭兵の汚らしい笑みが私の目の前に差し出されていた。どうしよう、どうしよう、と頭の中で声が回る。気がつけばナイフを手にしていた。
「そんなもので俺に勝てると?」
 鼻で笑う男を睨み付けながらナイフを振りかぶる。
 そして、思い切り振り下ろした。
「ぐ……!」
 呻き声に耳を塞ぎたくなるけれど仕方がない。あの子供を救うにはきっとこれしか方法がないのだ。
「いつ気づいたの……?」
 子供が悲しそうな目をして私を見る。
 きっと一分すらかかっていなかった。私の家の床は血にまみれ、そこらじゅうにアマンの――人間であったものの部位が転がっている。
「ねえ……いつ、気づいたの?」
 子供はいつもより怯えたような声を出している。血に染まった両手をタオルで拭きながら、怖いだろうに私に話しかけている。
 私は頭を振った。そんなことはどうでもいいのだ。
「ねえ、ちゃんと……それに」
 契約をしてしまった。と言いたいのだろうが、続く言葉はなかった。
 赤く光る目で私の顔色を窺うように覗き込んでくる。片翼はやはり白く、左のあるはずのない翼は漆黒の闇の色をしてそこにあった。
「ごめんね」
 子供の謝罪の言葉に私はもう一度首を振った。
「私、が、したことだから。……天使なんかじゃないって、知ってて、あなたを傍に置いておきたくて――」
 誰でもいいから、傍にいて欲しくて。
「だから、だから――消えてしまうくらいなら、私の血も身も、あげるから」
 天使なんてものじゃない。
 彼でも彼女でもない子供は。
「だから」
 昔の文献に載っていたのは、天使の対抗勢力である悪魔の特徴だ。黒い翼を持ち、力を行使するときに瞳は赤く輝く。一般の錬金術師なら誰でも知っていることだ。
 ただ、その悪魔が天使とあまり変わらぬ姿をしていることに。天使が生前の善行の多さにより神に道を示されるのと同じく、悪魔が生前の悪行の多さにより神に道を示されることをいったいどれだけの人間が知っているというのか。
「お願い、傍にいて」
 錬金術師の才能があったから生きてこれた。親にこの身を売られ、役人の玩具になり、それでもいきてきた。
 ずっとひとりで。ひとりきりで。
 だから、もう。
「うん」
 幼い声と細い腕に抱きしめられる。
 温かかった。
 優しかった。
 幸せだった。
「無理やり自分の腕を裂いて僕に血を飲ませるんだから恐れ入るよ。でも安心して、その契約は解かれることのない呪いだ。君のその身が滅ぶまで、君はずっと僕に憑かれ続ける」
 ずっと。
 一生。
 その言葉がどれほど幸福で切ないことか。血で交わされる契約は絆ではない。だからこそ絶対だ。子供の――悪魔の言うことは絶対だ。
「君の血は本当に真っ赤だね」
 悪魔は突然そんなことを言って笑う。
「まるで初めて会ったときに拾った、あのリンゴみたいな色だ」
 そう言って悪魔は、本当に切なそうに、笑い、未だ私の腕から流れる血を舐めた。

end 

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