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君もこのドキドキを体験してみればいい。

 いいねぇ。
 そう呟いて、彼はシャッターを切った。
 昔見た漫画の効果音ではパシャ、パシャ、という祇園が使われていたけれど、私にしてみればキシャ、キシャ、という鋭い音だ。まるで超旧式カメラの鳴き声、と言ったところか。
「面白い?」
 興味無さそうな声色で訊ねてみれば、彼はファインダーから眼を離さずに面白いねぇ、と応えた。
「わかんねぇ?」
「わかんねー」
 そもそも、既に絶滅寸前の超アンティークカメラを使う事自体、理解できなかった。フィルムなんていう物体が存在していることさえ、私は知らなかったのだ。
 時代が変わるにつれ、街中には3D構成のポスターや立体映像によるCMが散乱した。それらは光の散乱・屈折により、見事昔のSF小説を現実のものに成し得たもので、しかし一旦普及してしまえばそれはそれ。今ではすっかり都市の一部として、私達の生活に溶け込んでいる。
「だいたい、なんでフィルムとか使うのか意味わかんない」
 いまどき、プロの、しかも古参のフォトグラファーくらいなものだ。一眼レフカメラなんてものは、絶滅危惧商品として夕刻のニュースの1コーナーとして取り上げられるべきだ。アマチュアのカメラマンでも、古くて何百万画素のデジカメを使っている。ちなみに一般に普及しているのは写真を立体構成にする3Dカメラだ。
「今の主流は3Dビジュアル。平面画なんて流行んないよ?」
 カメラマン志望の友達も3D構成の写真を取り扱う最新式のカメラを使っているけど、個人的な趣味でも2D立体がせいぜいだ。目の前の青年は、2Dならば平面の方がよほど立体的だと豪語しているが。
「流行ってなんだよ。新しい伝染病?」
 ニヒルな笑いは彼の最も得意とする表情だ。ヒヒ、と声を上げ、しかしそれでもファインダー越しの景色から視線を外さないのは、もう意地と言っていいかもしれない。彼は人と話す時は相手の目を見なさい、と教わらなかったそうだ。
 私は彼の言葉に首を振り、質問を返した。
「だったらどうして今時アンティークなフィルムなんて使ってるの?」
「そんなの決まってんじゃん」
 キシャ。彼の翳すカメラがまた鳴いた。
「フィルムってのは昔は2〜3日で現像が出来上がって、しかも1個5ドル程度だったんだ。それが今じゃフィルム1個に15ドルもして現像に1週間かかる。かなり非効率な上高価だよなぁ。もう最悪」
 全くよく言う。最悪、なんて口にしておきながら彼の顔色はこれ以上無いほどに楽しそうだ。……カメラのレンズ越しでは分かり辛いけれど。
 彼の演説は続く。
「でも俺はそこがいいんだよ。フィルムってのは現像して写真が出来上がるまで結果が分からないから。一週間、写真撮った時のことを思い出してあれはどうなってるか、とか、ああしたのはどういう風に写ったか、とか。そんな風にアレコレ考えて、期待とか不安とかそういうのでドキドキしてんのが気持ちイイの。デジカメじゃ撮った瞬間結果が分かるからそんなドキドキ味わえないだろ」
 そんなドキドキ感いらない、と正直な私の心は判断を下した。どう考えてもその場で結果が確認できた方が効率的じゃあないだろうか。
 けれど彼の方は私とは正反対の考えのようで、古式の写真機具について持論を述べる彼の表情は、普段の皮肉気なそれとは違っていた。年相応に微笑みを浮かべる彼を見たことがあるのは私だけじゃないだろうか。きっと彼の両親も見たことが無いに違いない。開いた唇の隙間から覗く八重歯が異様に白いことも、きっと私以外誰も知らないのだ。
 だから私は掌に収まるくらい小型のデジカメで、彼の笑顔を撮ってみた。
 そうしてスイッチひとつでパソコンへ送信された彼の笑顔は、明日の朝には立体映像として私のモバイルのトップを飾ることになるのだ。


fin

————————————————————

こんばんは。
本当ならば夜9時には書き上がっていたはずのこの日記、うっかり記事送信前にウィンドウを閉じてしまったがために必死で書き直しています。
でもなんだこれ!なんだこれ!
冒頭の短編、こんなどこかラブちっくになるはずがなかったのになぁ。何故だろう。絶対最初に書いたやつの方が良かったやい・・・。

まあ、それはともかく。

冒頭小説にもあるように、僕は登場人物の彼と同じく、現像ができあがるまでのドキドキ感がたまらなく好きです。
というわけで、今日は久しぶりに屋上に写真を撮りに行って来ましたー!イエァ☆
でも時間が時間なために、フィルムの後半はもしかしたら光量不足で暗くなっているかもしれないのが不安です。でも逆にその暗さが味になってたらいいなぁなんて思ったり。
今回使用したものは、靴、真っ赤なミュール、赤縁の伊達眼鏡、黒シャツ、折り畳みナイフ、蝶のヘアアクセ、MDプレーヤー、MD、本。
もちろん夕暮れの空も撮ったけど、今回はあまり撮らなかったなぁ。そもそも夕刻に出向くのがおかしいよなぁ。もっと早くに家を出なければなぁ。
はい、反省終わり!


あと、映画観ました!
七人の弔』(PC/公式HP)
なんつーかもう、すごかった!
本編開始30分で泣いてしまった映画は初めてです。
ダンカンさん初監督・脚本作品。
ダンカンさんってこんな映画作るんですね。これからが凄い楽しみ。
でもってこの作品、もの凄く社会風刺的なテーマです。
内容としては、『虐待を受けている子供とその親があるキャンプに参加する。そのキャンプは実は「虐待するほど憎いこともならいっそ殺して内蔵を売りましょう」というセミナーだった。』という感じ。
最初の方の子供達が川原で石を積み上げてるシーンが一番キツかったなぁ・・・忘れられないもん。
ちなみに泣いた理由は色々なことにびっくりして。悲しい、とか、切ない、という感情が入り交じったごった煮状態のなかで、沸々と・・・なんか言葉にし難いんですが、とにかく目見開いて涙流してしまいました。本編開始30分でですよ?!自分でもびっくりサプライズ。
もう、出てくる大人の汚さとかどっかオカシイ考えとか、子供の無邪気さとか親への愛しさとか、言葉で表ることが困難すぎます。
そんなわけで一足飛びに結論。
つまるところ、すごく面白い映画でした。
映像も姉貴曰く「お金かかってる」から綺麗だし、内容も申し分ありません。
好悪分かれると思うから、あえてオススメしたいけどオススメしません。見たい方は試しにどうそ、という感じでしょうか。ああ、でも一度くらいは見ておいたらいいかも。

ネバーランド』(PC/公式HP)
良い映画でしたー。
ちょっとスタティックな感じはあるけれど、でも面白かったかな。
ヒロインをネバーランドに連れ出すシーンは綺麗だったなぁ。
あとピーターパンがとても素敵でした。綺麗綺麗♪
テーマは「信じる心」と「想像力」。
でもこれって一歩間違えると危ない人になっちゃうのが危ないところですね。
オカルトと超科学は紙一重。想像と妄想な限りなく近いもの。空想は形にすれば生産性があるけれど、個人の脳内で滞っていると途端生産性どころか反生産性に発展してしまいそう。
言葉って難しいなぁと再確認してしまいました。いや、この感想はたしかに映画を見て感じたものですが、あまり映画本編とは関係ありませんのであしからず。
うぅ、僕はどうも空想家を悪く言い過ぎだなぁ・・・僕自身そうなんですけどねぇ。




ふう、やっと書き終えた(笑)
もう夜中の2時半です。9時から学校なのに・・・バイトも入っちゃったのに・・・orz
でも髪を染めれたのは満足だ。


そんなわけで寝ます!
おやすみなさ〜い。






ということを書き上げたら忍者ブログはメンテ真っ最中(悲)
この記事をUPするのは・・・朝だろうなぁ・・・orzorzorz






追記。
前日に楽しみにしていた雑炊は、母親様が鍋の残り汁を捨ててくれていたので叶わぬ夢でした。畜生。

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