最後の休日は、いつも時間がない。 破片は危ない。 母さんだって、割れたお皿の破片で手を切っていた。 だから、破片は危ない。 切ってしまうから。 現に目の前の男だって、顔を傷つけてしまったじゃないか。破片で。「無事か?」 褐色の兎が傍らに膝をついていた。腕を広げて、まるで尻餅をついた私を庇うなんて愚行にも見える体勢で、黒い兎は私の目の前に在った。「……貴方の口からそんな言葉が出るなんて」「社交辞令だ」 振り向いたニヤニヤ笑いの少年がそう告げた。 私が立ち上がると、黒い兎も立ち上がる。兎が広げていた腕を振るうと、地面に黒いなにかが突き刺さった。「なに……?」「さあな、夢の破片みたいな塵だろ。それよりもアリス、気をつけるか今すぐ逃げるかしろ」「なんですって?」「眠りの国の人間が夢を失うのは、最愛の恋人を失くすよりも酷く悲しく、唯一の居場所を失くすよりも哀しく辛い」 右手で左の腕をさすりながら、黒の兎が喋る。ニヤニヤとした笑みは相変わらずで、緊張感の欠片もない。 だから私は反応が遅れた。「アリスなどチェシャ猫に食われてしまえ!!」 悲鳴にも近い声が耳元で爆発した。鼓膜が破れたかと思った。けれど、兎の声は相も変わらず、人を馬鹿にするような色を伴って後ろへ吹っ飛んだ私の耳へと届けられた「だから言っただろ、アリス。気をつけるか逃げるかしろって」 私を思い切り押し飛ばした兎がニヤリと笑う。私はその笑みを見た瞬間に背中にくる衝撃と痛みを覚悟したけれど、背中に当たるのはもふっ、とか、ぽふっ、というファンシーな擬音が似合いそうな柔らかさだった。「アリス、大丈夫か」 柔らかな羽で私を包み込んだスコルの左の頭が声をかけてきた。「あまりに油を売りすぎるとコンロで焼かれますよ、アリス」 疑問を口にしつつ、私の傍ら降り立ったのはジャックだ。「どいつもこいつIの邪魔をして! アリスに味方するなんてお前ら間違ってる! 狂ってる!!」 絶叫。見れば、美丈夫の男が焦点の合っていない目を私に向けていた。ぶるぶると震える体で身を捩る様ははっきり言って異常だ。 ――狂ってるのはどっちよ。 思わず、思う。 美丈夫は顔が整っているだけに歪んだ表情はますます狂気染みた彼を演出していた。美形が怒ると怖いというのはよく聞くが、狂っても怖いものだとは知らなかった。「アーハハハハ! 狂ッテルーーーー! 狂ッテル狂ッテル狂ッテル!! アリスノ周リーハミミンナ狂ッテテルーーーーー!!! アハハハハハハ!!!!!!!」 スコルの右の頭が笑う。楽しそうな声だった。 動いたのは美丈夫だった。私へ向かって突撃してくるのを、兎が足払いを掛けて転せる。美丈夫は体が倒れるも勢いに乗って前転し、そのまま起き上がると必死の形相で尚も私に向かってくる。私は足が竦んで動けない。「これだからネズミは嫌いです。トランプの女王の城でもネズミには手を焼かされました」 ジャックが腰に付けたサーベルを引き抜く。血生臭いのはもう散々だと私は制止したが――声が出ない。「――ぁ」「大丈夫ですよ、アリス。怖がることはありません」 ジャックは私に優しい言葉をかけた。「怖がることはないんです。何一つ」 ジャックは私に優しい言葉を押し付けた。Title of "Madness"To be continude...?*****途中で思い切り書き直したくなったけど、アリスを開き始めたころのポリシーに則ってそのまま投下。忘れるから書いておく。yahoo翻訳で「発狂」と打ったら「Madness」と出てきた。この次がちょっと血生臭くなるんだけど、そのまま載せるかまた隠すか迷っているところです。載せたいけど・・・やっぱ隠すべきかなぁ。翼です。課題をひとつもやらず、eラーニングをブッチしているのにも関わらず、一日中ゲームを作っていた。なんだこれ。・・・はぁorz [0回]PR