それでもきっと、僕はヒトのままだ。 白いウサギは見惚れてしまいそうなほど優雅な動作で机から下りて両手を広げる。「時間を取らせて申し訳ありません。さあ裁判を続けて下さい。この薔薇の名を冠する彼女の頭に薔薇の紋章を刻んだ冠を載せる為に」 ウサギの演説はそこまでだった。両隣に座る金の髪の彼女と太った婦人の手の甲にそれぞれキスをして裁判員席に座る。「どうぞ、続けて」 ずいぶんと慇懃な態度だ。しかしそれこそ、彼がウサギたる所以のようにも思う。 今までどこに居たのか。おもむろに懐中時計を取り出して時間を確認する動作は、よくよく見慣れたものだった。「僕は時間がないのでね」 裁判が開廷したというのに時間がないとは。一体どこに行くつもりなのか。 私がそんな足踏みのような思考を巡らせているうちに、裁判は再開された。「では第一の被告人。何が気に入らなくて冠を受けないというのか」 低い低い声が黒いローブの奥から聞こえる。「この身体と、あの女の外見さ」 どういうことだろう。 金の髪の彼女は言った。「トランプの女王は代々変わらないわ」 ローズが言った。「それは知っている」 私はさっぱり意味がわからなくなった。この裁判は次のトランプの女王を決めるための裁判ではないのか。それならトランプの女王は代々変わるはずではないのか。「裁判長」 声を発した。 時間がないはずのウサギだった。「ひとり、とても物覚えの悪い候補者がいるようです。逐一説明をしてあげたら親切かと思いますが、如何でしょう?」 帽子を被った白のウサギはそう言ってにこりと笑う。視線の先に私がいたものだから、法廷内の視線も自然とウサギのそれに倣って私に集まることになる。 奥歯を噛んで耐えるしかない。実際、私は物覚えが悪いのだから。「……説明は誰が?」「僕にお任せを」 そう言ってお辞儀するウサギ。横で金の髪の女王がなにやら不服そうに口を曲げ彼を睨み付けたたが、果たしてウサギは気づいただろうか。「帽子ウサギに、物覚えの悪い候補者への補足説明を認める」 カンカンと振り下ろされる小槌にいい気はしなかったが、説明してくれるのならばこんなに助かることはない。私はこの城に来てロクな説明を受けていないのだ。そろそろ読者の皆様にもわかるように、細やかなフォローをお願いしたいものである。「ありがとうございます裁判長」 ウサギは身体を曲げて黒ローブに一礼すると私に向き直った。「アリス、よくお聞き」「――いつでも聞いているわ」「いい子だねアリス。君は本当に物覚えが悪が、それは決して悪いことじゃないから安心するといいよ」「あなたは」「君は黙っていれくれるかな、先代クイーン」 金の髪の彼女の言葉をウサギが遮るのを私は黙って見過ごした。ここで突っ込んでも、説明が長引くだけだ。ウサギも時間がないらしいし、ここはさっさと説明をしてもらおう。 私はウサギが口を開くのをただ見つめていた。 傍聴席にいる、大勢の視線を受け止めながら。Title of "The speech of the rabbit."To be continude...?*****初めて紙copiに心底感謝した。えと、少し日記の更新も止まるかもしれません。止まらないかもだけど……むしろ止めなければいけない状況。きっと今なら友達に刺し殺されても文句言わない。通り魔的なものに刺し殺されたら文句言うけど。逃げ出したい☆ブギウギ♪リボーンコラとかやってる場合じゃねえ。できたら神になってくる。 [0回]PR