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優先度の並べ方を完璧に間違えている。

 茨の道を往くという言葉があるが、茨に囲まれた道を往く、という言葉も存在するだろうか。
 青い薔薇と黒い薔薇で作られた絨毯は、私がウサギに出会ったあの場所の周辺だけで、しばらく薔薇の壁に囲まれた道を進むと絨毯は薄くなり、気がつけば消えてしまっていた。随分進んだからここはどこだと訊ねられても渡せる答えはない。
 人はそれをなんと言うのか。
 迷子、である。
 けれど、そもそも薔薇の庭は迷宮なのだ。どこぞのラビュリントスの神話は有名な話であるが、つまるところそれはミノさんを閉じ込めるための檻であって、中に入った者を惑わせる仕組みが不可欠だったかと言えば甚だ疑問である。餌や贄がいるのならば、四方形の檻の中に投げ込めばいいじゃないか、なんだってミノス王は面倒な真似をしたんだろう。いやそんなことはどうだっていい。ミノス王は結局ラビュリントスを作ってミノさんを閉じ込めたのだから。私がいま考えるのは、もしもこの薔薇の庭園に、ラビュリントスに閉じ込められたミノさんのような存在がいるとするならば、今すぐにでも思いっきり生電話を繋ぎたいという願望だった。ああミノさん、迷宮で迷子になってしまいました、どうしましょう。きっとミノさんはこう答えるに違いない。「そりゃあね、あなた自身が進むべき道を見失っているからですよ」……そもそも進むべき道なんて持ってないよミノさん。
 ――私が疲労に負けてそんな電波な思考をしているとき、トランプの女王が少し休もうと言い出した。
「私も椿姫も慣れてるからいいけど、アリスにはちょいとばかし厳しい道のりだろうさ」
 とてもありがたいことだったので、私は頷き一つして道の端に腰掛けた。
「疲れた」
 私の口から零れ出た一言はそれに尽きた。
 大丈夫?と顔を覗き込んでくる椿姫に視線で頷き、なってないねと呟くトランプの女王のため息は無視した。
 ひどく歩いた気がする。
「…どれだけ歩いたの?」
 口を開くのも億劫だったけれど、どうしても気になった。
「まだ5分程度さ」
 トランプの女王はそっけなかった。反対に、さっきから薔薇の蜜を薦めてくれたりする椿姫の様に甲斐甲斐しくされるのも複雑だけれど。
「あとどれくらい歩くの?」
「さあね。少なくとも三時までには着かないといけないさ」
 こんなところにいる場合ではないのに、と私は思った。世界の果てにいかなければならいのに。あの白いウサギに会わなければならないのに。
 けれどそれも、結局は左肩に巣食う白薔薇に喰われてしまってはどうしようもない。だからこそ、私はこんなところにいなければならないのだろう。歩き続けて、トランプの女王の城へ行かなければ。
「…………?」
 ふと、右手に何かがあたった。
 なんだろうと思ってそちらに視線を移すと、毛糸玉があった。
 赤い、毛糸玉だ。
「……なに、コレ」
 私の呟きに椿姫とトランプの女王が振り返る。
「どうしたの、アリス?」
「なにか見つけたかい?」
 私は両手で毛糸玉を掴んで二人に見せた。が、二人は顔を見合わせて不思議そうな顔をするだけだった。
「そこになにかあるの?」
「見えないの?」
「私たちには、アリス、アンタがなにかを持ったパントマイムをしているように見えるね」
 どうやら見えていないらしい。
 そういえば、思いっきり生電話でミノさんをコテンパンにしたどっかの誰かは、毛玉を手繰ってラビュリントスを出たのだったか。
「ふたりとも、付いて来て」
 私は赤い毛糸を手繰り寄せ、毛糸玉に巻きつけながら歩き出した。


Title of "A labyrinth."
To be continude...?
*****
文章内はラビュリントスなのに、タイトルはラビリンスだという不思議。




23日は両親の結婚記念日ということでタコス食べてきました。
お腹いっぱいになったー。



そして僕は確実に何かを間違えている気がする。
猫の地球儀面白いです。久しぶりに読み返したら止まらなくなった。だからアリスがあんなに書けた。
やっぱ読書って不可欠だなぁ。


寝よう寝よう。
3時に間に合うかなコレ。

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