なにかが違う 「いやねえ、冗談よ」 カエルの公爵夫人はからからとかわいらしい声をあげて笑った。「この私が大好きなアリスを殺すわけがないじゃない」 そう言って恍惚とした表情で私を見つめる夫人。しかし蛇は私を締め付けることをやめない。シャアシャアとちいさな口から細長い下を覗かせて、無数の蛇はの体を這いずり回る。 後ろから、男の悲鳴が聞こえた。 ――誰か、噛まれたようだ。「ねぇ、アリス。私は貴女を殺したくはないけれど、貴女が死んでゆくのを見て見たいとも思うのよ。貴女に死んでほしくはないけれど、貴女の死体を花で埋め尽くしたガラスケースに入れて保管してみたいと思うの」 首と胴とを切り離してね。 カエルの公爵夫人はそう言って妖艶と微笑む。首を切り離せば永遠に生きられるのは世界の果てではなく歪みの国だ。カエルの公爵夫人はなにかを勘違いしている。「ねえ、アリス、貴女はどうされたい?」 どうしたい、ではなく、どうされたい、と質問するのは上からの目線である。流石というかなんというか、カエルの公爵夫人は自分より位の高い人間はトランプの女王だけだと思っている節がある。カエルの公爵その人だって、実質は夫人よりも位が上なのに。「………ぁ」 カエルの公爵夫人に問われたそれに答えようとしたけれど、蛇たちがあまりに私の首を絞めるので声を出すことが叶わなかった。だんだんと息も出来なくなってきている。 そうして、私の頭が真っ赤な風船のように膨らむ前に、降って沸いた声が蛇たちを驚かせた。「アリスを放せ!私の可愛いゴディバ!!」 しゅるしゅると蛇が私の体から逃げていく。その感触はなんともいえず鳥肌を立たせたが、そんなことよりも私は開放された喉で必死に息を吸い込んだ。 声が怒鳴った。「あああなんてことだ!おいヒツジ!!蛇だ、蛇がいるぞ!!汚らわしい!なんだってこんなところにこんなに蛇がいるんだ!!」 その声はテラスに入る扉の端から聞こえてきた。分厚いカーテンの裾に隠れるように、分厚いカーテンに隠れ切れていない長身の男がそこに立っている。「ご主人様、ゴディバ様がお帰りあそばれているんですから蛇がいるのは当たり前でしょう」「たたたしかにゴディバは蛇だが!しかしゴディバが蛇だからといってこんなところにこんなに蛇がいるのはどう考えたっておかしいだろう?!」 わんわん泣き叫ぶように、カエルの公爵夫人は怒鳴った。涙声だし、カーテンを握る手は震えてる。そんななんとも情けない風体だが、カーテンの陰に隠れて様子を窺う黒髪男はある意味、迫力がある。 お前はなにか、貞子か。 私は半眼でカエルの公爵を一瞥すると、テラスを見回した。男たちが山になって倒れている、はたして死んでいるのか気を失っているのかはわからないが、こんなことはカエルの公爵夫人には日常的だから、まあヒツジの執事も慣れているし大丈夫だろう。案の定、ヒツジの執事が救急箱を手に走ってくる。 カエルの公爵夫人は楽しそうに笑ったが、怒っているようでもある。「セミノール……部屋から出てきてもいいの?」「だだだって!せっかくゴゴゴディバがか帰ってきているんだから、ひ、一目でもみみ見なきゃ勿体無いだろうが!!」「なあにそれ。まるで私が外見以外に価値のないように言わないで下さる?」「だだだってそうじゃ……いやいやいや!そそんなことはないな!うん、ゴディバは見た目も正確もすべてが美しい!!」 がくがくぶるぶると、カーテンを握る手が震えている。顔を半分だけ覗かせるカエルの公爵は本当に、なんとも情けない。「ああ……ウザったらしいったらないわ。アリス、あの男を私の目の届かないところに連れて行って頂戴」 こめかみを押さえて、カエルの公爵夫人は言う。私はわかりました、と苦笑してから、倒れる男どもを介抱するヒツジの執事の横を通り過ぎてカエルの公爵の下へ向かう。「お久しぶりです、カエルの公爵様」 テラスから邸宅の中へ戻り、カーテンに隠れるカエルの公爵の下に跪く。ああ、とカエルの公爵は微笑んだ。「堅苦しい挨拶はいらないよ、アリス。それにしても久しぶりだね。僕に何か用があるんだって?」 私は立ち上がる。 見上げる先、柔和な笑みを浮かべて、この世の美を兼ね揃えたような顔の青年がそこにいた。Title of "A duke of a frog."to be continude...?*****アリスを書くに当たって、僕は毎回ひとつ前のを見返すのですが、たまに思いもかけない誤字を発見します。発見してどう思うわけでもないのですが、あれですね、もしホムペの方に移行するようなことがあったらちゃんと直さないとね。とりあえず蛇にとぐろをまかれて失血死するような人間がいたら見て見たいです。(ちなみに誤字は修正済みです)そういえば、ブログでたまに見かける「続きを読む」の文字。僕はあれのやり方を知りませんでした。そのうえいざ日記を書くとその存在すらも頭から抜けていたのですが、最近始めたなりきりブログのほうでやりかたを発見してから、使いはじめてみました。今回はアリス裏話。呼んでも読まなくても構わないもの。実際、書き殴った短編をそっちにのっければいいのでしょうが、まあとりあえず今のスタイルのままいこうと思います。逆に違和感がありそうだし。追記のほうには読んでも読まなくてもどっちでもいいものを書こうかなと思っているので、暇な人はどぞー。さてさて、今日は久しぶりの風邪でかなりダウンしてました。僕は基本的にメンタル如何によって体調を崩しても、病気をすることは稀なので、久しぶりの風邪がどれくらいにしんどいのか実感しましたー。思考がトロい。動きもトロい。体はダルい。でもって大切にさせる嬉しさというのがわかって、嬉しいんだけども戸惑い気味です。僕のために姉さんが薬を買いに行ってくれるなんてことがあるなんて・・・!!(驚愕そんなわけで、今日は昼間はずっと文字通り寝てました。家族の夢を3回見た。まあでも、ちょっとパソコン触ったりしたけども。こうやってまたこんな時間に日記書いたりもしてるけど(汗)秘密の花園の最終回はバッチリ見たけども!bさて、そろそろ寝ますー。明日のバイトは9時からです。ちゃんと行けたらいいなー。遅くなりましたが、Web拍手ありがとうございます!!そのひとポチが元気の源です(//▽//) アリス、ちょっとした裏話。カエル公爵の名前をつけようと、googleで「神話 カエル」で検索をかけてみた。そうしたら、こんな話を見つけました。「その昔黒人のセミノール族という民族の間では、ヒキガエルが太陽を食べるために日蝕が怒ると伝えられていたそうな。だからセミノール族の狩人は日蝕や月食が起こらないように、ヒキガエルはみつけしだい矢で射るという」そんなわけでカエルの公爵の名前はセミノールにしてみた。カエルを殺す民族の名前をカエルにつけてみる。僕はこういった皮肉やブラックジョークがけっこう好き。なんで使いまくりですねーやや強引な気もしますが(苦笑)使うだけでなく、作り出せるようにもなりたいです。精進精進。 [0回]PR