カエルの公爵夫人 カエルの公爵夫人は小柄だ。 身長150センチ程度。しかし何故かスタイルが良い。出るところは出てへっ込むところはへッ込んでいるなんて、なんて恨めし――羨ましい。そのうえ美形をはべらせるだけの魅力があれば、そりゃあ世界中を無一文で飛びまわれるわけだ。「久しぶりね、アリス。ああ、アドルフ、アリスにお茶を」「畏まりましたゴディバ様」 名前を呼ばれた金髪ウェーブの男は、カエルの公爵夫人に向かって一礼すると邸宅の中へ消えた。「いえ、すぐお暇するので結構で」「そんなの嫌よ。だって私に逢いに来てくれたのでしょう?」 カエルの公爵夫人は無垢な少女のように可愛らしい笑みを浮かべた。私の目をまっすぐに見つめて「イエスと言いなさい」と無言の圧力をかけてくる。 ここで頷くのがきっと最善なのだろう。しかし残念ながら今の私にはタイムリミットが課せられている。キリギリスの演奏会に間に合わなければ、私は卵の殻を着た双子に文字通り八つ裂きにされてしまうだろう。「奥様にお会いたかったのは本当です。けれど私はどうしてもカエルの公爵様にお会いしなければいけないのです」「・・・・どうして?」 仮面を貼り付けたかのように、カエルの公爵夫人の笑みは微動だにしなかった。しかし静かな水面に手を差し入れたときのような、静かな揺らぎがはっきりと空気に表われていて、私の背後にいた黒髪の男の座っている椅子が大破した。「カエルの公爵様にお会いしなければならない理由があるのです」 私は悲鳴をあげてテラスから逃亡する男を完璧に無視して、カエルの公爵夫人の顔を見つめたまま立ち上がった。同時にカエルの公爵夫人の手を離そうとするが、反対に強く掴まれてしまった。「理由は?」 カエルの公爵夫人も、逃げた男に関しては何を言うつもりはないらしい。そうやら逃げていく男よりも友人である私の方が必要なようだ。 少しだけ嬉しい。「私は今日、キリギリスの演奏会への招待状を頂きたくて参りました。カエルの公爵様がお持ちでしたら譲っていただくか、お持ちでなければ筆跡模写をお願いしたいと」 果たして書斎に引きこもっていカエルの公爵が、私の願いを聞き入れてくれるかどうかは疑問であるが。「それならば私から頼みましょう。あの人はそういうときしか使えない人間だから、たまには些細なことでも人の役に立ち、私のお情けで生きながらえていることを実感すればいいのだわ」 そう言って夫人はからからと可愛らしい声を立てて笑った。「今回の長旅は公爵様との諍いが原因ではないのですか?」 カエルの公爵と夫人の仲は決して悪いわけではない。が、頻繁に勃発する喧嘩はとめどなく被害を増幅させ、結果的に夫人が邸宅から家出と称した行き先不明の長旅に出て幕が下りる。だから今回も夫人が出て行ったのは喧嘩したからだろうと思っていたのだが、夫人自らカエルの公爵に頼んでくれると言うのならば今回ばかりは違うのだろう。 と、思った。「・・・・・・・・・・・・・ああ、そうね」 低くて低い声が、出た。 文字にすれば禍々しい写植があてがわれるだろう声は、紛れもなくカエルの公爵夫人の口から出たものだ。 ティーセットを運んできたアドルフが、ティーセットの載ったトレイを落とした。過激な音がして、残っていた男たちが慌ててアドルフに駆け寄る。「いいい嫌だぁああ!!」 大丈夫かと口ぐちに言いながら駆け寄る男たちをすべて振り払い、アドルフはテラスの柵を越えて走って行ってしまった。 それでも、私も夫人も、微動だにしない。「でも、ひとつだけお願いを来て欲しいわ」 ピンク色のルージュを煌かせた唇に人差し指をあてて、夫人が可愛らしく首を傾げる。 さあて何が飛び出すか。 私は大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。Title of "A request."to be continuede...*****ねっむいねっむい。今日アルバイトの面接に行った先にお断りの電話を入れようとしたら、定休日でした。明日頑張ろう。やっぱりあそこはダメっぽい。胸が押しつぶされそうな不安を感じたのは、やっぱり不安要素がまだまだ大きいからだ。吃音だからといってこのままというわけには決して良いわけはないけれど、ウエイトレスはやっぱり時期早々だ。僕にとっては。HPのデザインをシンプル極まるものに変更しました。携帯で見ると画像が表示されないんだもんなぁ。ううん。明日は学校の友達で集まっての飲み会です。母さんにお金借りれるかなぁ。 [0回]PR