偽者は偽物 世界の果てを見に行こうと言ったのは紛れもなく彼女なのに、いつしか彼女はそのことを忘れてしまったようだった。 赤いダイヤのトランプがなにを喚こうと、黒いクローバーのトランプがなにを諭そうと、赤いハートのトランプがなにに対して涙を流そうと、黒いスペードのトランプだけは共に剣を取り立ち上がった。「何を想っておられるのですか?」 スペードの4が隣に立ち問う。 僕は微笑を浮かべて答えた。「何も想っていませんよ」「本当ですか?」 スペードの4は眉を寄せる。 僕は肩をすくめた。「コインロッカーで回されるのと、電子レンジで回されるのと、どっちがしんどいかなって考えていたんですよ」 そんなことを言えば、スペードの4は肩を落とした。「それは電子レンジで回されるほうに決まっているでしょう。死んでしまう」 あなおそろしや。スペードの4がそう呟いた。それを聞きつけたらしい背後から近づくくすくす笑いに、僕とスペードの4が揃って振り返るとスペードの8が近づいてきていた。「それはどうでしょうね。電子レンジで回されたほうが、コインロッカーで回されるよりも辛くないと考える人だっていましょうに。たとえば……」 つい、とスペードの8は白く長い指を上空へ向けた。「あの、猫のようにね」 青空に、逆さになった三日月がぽっかりと浮かんでいる。切り取られた青空のように、そこにあるのはただの空間。――それとも、無類の笑みの弧。「あんなところに……」 口元を押さえて驚くスペードの4は、最近兵隊になったばかりの新参者だ。間違えるのも無理は無い。チェシャ猫はいつだってどこにでもいたのだ。現在、どこにもいないことが不可思議なのだ。「あれは、違います」 そう言うとスペードの4は首を傾げた。「あれはチェシャ猫の足跡に過ぎません。チェシャ猫はいま、どこにもいないのですから、あれがチェシャ猫だとすればすべてが嘘になってしまう」「それは…どういう意味でしょうか?」 こめかみをもみながら質問するスペードの4。僕は思わず苦笑して頭を掻いた。純粋な疑問はときに実に鋭く真実を突くものだ。「それは誰にもわからないんですよ。ねえ、帽子のウサギくん?」 同じように苦笑したスペードの8が茶化すように笑う。 僕はスペードの8と全く同じ笑みをスペードの4に向けた。 スペードの4は案の定、顔にクエスチョンマークを貼り付けていた。tittle of "A rabbit and a spade of cards."end******アリスを書くとまた長くなりそうだったので、ウサギに登場してもらいました。続けて書いてかないと忘れそうだこのプチ連載(汗今朝起きたら、高校の友達が「集まらない?」とメール送ってきてたので集まってきました!!マックでポテトパーティしつつダベり、店員の可愛いお姉さんとお客のかっこいいお兄さんを見つめたり(ぇ)、それから地下へ行って3000円近くするジャンボパフェをおごってもらったりしました。やっぱ久しぶりに友達と話すの楽しいです(´∀`)今日は時間を無駄にしなかった・・・気がするぞ!明日こそレッツ電話です!頑張ってバイト見つけるぞ! [0回]PR