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今まで本当にありがとう。

 秋風に前髪をなびかせ、遠くを見つめながら彼女は呟いた。
「それは心の持ちようかもね」
 その台詞は、将来の進路を決めるべきときに未だうじうじと悩んでいる私の心に居心地悪く染み入った。
 針葉樹である杉の木のてっぺんに器用に重心を固定して立ち、平然と太陽を横目に見ながら彼女は言う。
「だってさ、結局どんな任務に就こうがどうなろうが、結局そのときに何を思うか、っていうのが問題なんじゃない? 私の経験だけど、初等部の頃にやりたい授業ばかりとって友達とわかれて授業受けてたときより、中等部になってから好きじゃないけど友達と一緒の授業受けてたときの方が楽しかったもん」
 そう言って肩をすくめれば、どこかでケンタウロスが啼いた気がした。神聖な森でなんて意思の介入のないことを言うんだろうと思った。知り合いのケンタウロスが聞けば、泣くだろうかそれとも怒るだろうか――案外笑うかもしれない。
「プロ意識、なんて大それたものを持ちなさいなんて言うつもりは更々ないよ。まだまだヒヨッコの私がそんなこと言っちゃ、生意気だ!って師匠に怒られちゃうもん」
「イーアの進路は魔法省だっけ?」
「やめてよ。魔法省なんてえげつない。私の選択は清く正しく悪の道を進む警備局だよ」
「清く正しく悪の道って、なにそれ」
 イーアの言葉に笑いをこぼして、私は彼女を見上げた。協会の十字架の右手は、イーアの立つ杉のてっぺんより低い。
「清く正しい国内パトロールと悪の道バリバリの魔物討伐事業だもん。とくに肉食獣一斉討伐は、魔物たちにとったらただの大虐殺のほかでもないと思うけどね、私は」
 イーアは私に向かってニヤリと笑い、何の違和感もない動作で杉の木から跳んだ。否、足を外した。一歩だけ、隣に移動したと言えばわかりやすいのか、とにかくイーアは物理学の法則に従い、落ちた。
「…………まったく」
 私は思わず叫びそうになった自分を振り返り、頭を抱えた。イーアの突飛かつ大胆かつ意味不明な行動にいちいち構っていたら自分の身が持たないとわかっているのに。それでも心配してしまうのは、きっと友人の性だ。
「覚えたての魔法を使ってみたいっていう好奇心を持つのは、大人も子供も同じだよ?」
 イーアは人の悪い笑みを浮かべながら、十字架のてっぺんに移動していた。知人の大魔道士から教えてもらったという瞬間移動らしい。普通、瞬間移動なんてものは、停止状態の物質を魔法陣を用いて別の場所に空間ごと移し変える魔法なのに、イーアの知人だというどこかの国の大魔道士様は勝手に魔法理論を組み替えて、移動中の物質を空間ではなく物質そのものを転移させてしまうという新しい魔法を作り出した天才らしい。
 魔法理論を組み替えるその大魔道士様はもちろん、その魔法を易々と(本人曰く体得には苦労したらしいが)仕えてしまうイーアもイーアだ。
 まったく、世の中には凡人には理解不能な人間が存在するものだと思う。
「また小難しいこと考えてない?」
 私はため息を吐くと、イーアがそう言ってデコピンをかましてきた。
「別にそんなことないよ」
 イーアの色素の薄い髪を引っつかんで少しだけかまいたちで切ってみた。途端、きらきらと光の粒子が私の手を包み込む。これが街で売っているカイロより暖かく、しかも見た目が綺麗なので、イーアは毎年冬になると一年かけて伸ばした髪を高値で売りさばく。これはイーアの遺伝子の突然変異によるもので世界中のどこにもないまさに唯一無二のものだ。それをホッカイロ代わりにと売りさばくイーアははっきりいって変人だと思うが、買うほうも買うほうである。ちなみに、こんなことを思う私は実はそのホッカイロ代わりのイーアの髪の毛の常連だったりする。
 イーアの髪が変化した光の粒子の消費期限は気温が15度を超すまでだ。例年にない暖冬の今年、すでに光の粒子は消えてしまった。
 いま、イーアの髪の毛は短い。
「それで、希望職種はいくつかあるんでしょ?」
 十字架のてっぺんに寝そべって、イーアは私に対抗するように私の髪の毛を弄る。空中から次々に髪ゴムを取り出しては私の頭に芸術を創る。
「ベルなら保健所?それとも保安局か。私としてはベルには是非とも教職について欲しいんだけどね」
「どうして?」
「教え方上手いじゃん」
「友達だからだよ」
 そう言うとイーアはきゃらきゃらと声を上げて笑った。人を小馬鹿にしたような笑い方だけど、私はイーアの持つ笑い方のレパートリーのなかではこの笑い方が一番好きだった。
「最高。やっぱベルは教職に就きなよ。人を幸せにするシスターが向いてるよ」
「私が牧師嫌いなの知ってるくせに」
「自己中心的なペド男なんて、私がいつか抹殺してあげるよ」
「捕まらないようにね」
「清く正しい悪の道に進むから、そっち方面は安心していいよ。警備局ってそういう裏工作得意なんだって」
「どこが清く正しいんだか」
 私はくすくすと笑いをもらしながら、私の芸術的な仕上がりになった頭に満足するイーアを見上げた。さんさんと輝く太陽の逆行で顔がよく見えない。
「私もイーアと同じ職業にしようかな」
「ベルは駄目。危ない」
 憮然とした表情でイーアは言う。自分は危ないところにばかり突っ込んでいくくせにずるい、なんて思っていたのは随分と昔のことだ。自分の身よりも他人の身を優先する、なんてことをイーアはしないが、友達が傷つくのだけは酷く嫌がるのだ。だから、そのくせ自分は友達に心配ばかりかけているくせに、とは思うようになった。
 私はそんなちいさな憤りと、小さいころのイーアに対する羨望を一緒くたにして、ニヤリと口角と持ち上げた。
「心の持ちよう、なんでしょ?」
 そう言ってやると、イーアは拗ねたような顔をしてぺろりと赤い舌を覗かせた。


fin

Tittle of "The standby of the heart."
*****

久しぶりに書いたら、気持ちが先走ってる文章になってしまいました(苦笑)
うっわ、なんといいますかですね、あのですね、どれだ。(ぇ)
そうそう、文章書く感覚がつかめないです。ハイ。

ブランク空くと、たちまち書けなくなるか、とびきりの文章が書けるか、二者択一、翼です。

ああ、文章書くのってこんなに楽しかったんだなぁ(嬉)
最近は絵の練習で、小学生並のイラストを書き殴っているので、文章書きたいー!っていう意力が低下してるかと思っていたらそうでもなかったです。楽しい楽しい。

あ、ちなみに今日の短編とタイトルは、あなたがつぶやく最後の言葉(PCサイト)というところで判定をして出たものです。
僕は推定年令88歳で、娘家族にみとられながら、ぼんやりと先立った伴侶を思い浮かべ「今まで本当にありがとう」とつぶやくらしいです。
うっわ、幸せ者だ僕・・・!!。゜(TдT)゜。
そして、ラッキーワード『それは心の持ちようかもね』。
これを(秋風に前髪をなびかせ遠くを見つめてつぶやくとラッキー度、更にアップ!)らしいです。
そんなわけでイーアに言ってもらいました。
あれ、この場合ってもしかして・・・僕、言ってない・・・??

まあいいか!


なにはともかくテストでした。
一日勉強して目標点50点です。単位取れてるとこを祈ります。
明後日はアルゴリズムなんですが・・・明日姉さんも休みで、僕も学校なくて、「じゃあカラオケ行こうか!」という話が持ち上がって正直ドキバクです。
どうしよう・・・このままカラオケとか行ったら単位落としそう(じゃあ行くな)
まあ、なるようになれということで。はい。
先輩はWeb配信授業で半年で50単位取ったっていってたし!!
こう考えるから駄目なんだろうなぁ・・・僕ぁ・・・。


最近クラスメイトとメッセでよく交流しています。
僕はよく弄られてたりします。これでもかってくらい弄られます。
「り」は「め」より百倍恐ろしいのに・・・。(そういやまだ読んでないなこの本)
テスト明けにはクラス会でボーリング。
それが終われば必死でバイオ探しございます。
ファイオーファイオー!


今まで本当にありがとう。
これからも本当によろしくね。

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