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僕は神に見捨てられ、悪魔に拾われでもしたのか。



一万円の入った財布をドン・キホーテで落とし、今晩は貫徹の予定をなった翼ですこんばんは。
今日も遅刻で学校へ。つーか、後期入って遅刻しなかった日がないです。人間失格だなぁ。

えっと、今日バイト先でやっとバイト辞めの許可が出ました。わーい。向こう一ヶ月はいまのバイト先ですがね、もうすぐ無職です。わーいわーい。


忙しいの今日はここまで。
気が向いたら書き直すかも。でも多分書き直さない。



みなさま、おやすみなさい。































ハロウィン小説第四弾



*********

「つまりさ、思うんだよ」
 亮はいつも見舞いにくるのに、見舞いの品を持ってこない。それどころか、山と詰まれた見舞い品を食べ崩しにやってくるのだからいい神経をしていると思う。
 食べかけの極細ポッキーを四、五本纏めて噛み折り、手に残ったそれをごみ箱に放り込む。そうして果物かごにかかったビニールを破り、なかにある綺麗に赤い色をした林檎を丸かじりした。前言撤回。いい神経とは思わない。むしろ「お前は一体どういう神経をしているんだ」と是非とも訊いてみたい。
 口元に包帯を巻かれているので、それは叶わないけれど。
「最近の製菓メーカーって宣伝を怠ってるよな。お前、CMでチョコレートとか飴以外にお菓子のCMって見たことあるか? ないだろ? 受験シーズンはともかくここんとこどこのメーカーもスナック菓子とかアイスとかのCMにあんま力入れてないように思うんだな、未来の大手製菓メーカー社長の俺としては」
 話しながら喋るのをやめろと何度言ったらわかるんだろうこの男は。
「もっとこう、CDとかケータイとkのCMみたいに、派手にさ。一瞬なにかわからないけど、見終わった後に「ああ、なるほど!」みたいなでかい印象を与えるようなCMってお菓子のCMにはないもんかね」
 林檎はあっというまにいびつな芯になった。亮が軽く手を振って部屋の隅に放ると、プラスチックのゴミ箱に見事ダイブ。こういうことだけは上手いんだよな、なんて感心しているうちに、亮は見舞いの品に手を伸ばす。
「太るよ」
 そう言いたいけれど、生憎と口には包帯が巻かれているので出来ない。だからベッドの脇に置かれた小さいホワイトボードに手を伸ばし、赤色の水性ペンで大きく書いてやった。
”太れ。そして肥満で死んでしまえ”
 亮は私の翳したホワイトボードに目を滑らせると口を尖らせた。
「肥満で死んだ人間なんて聞いたことねーよ」
 私はティッシュで赤い文字を掻き消し、新しく書き直した。
”でも生活習慣病で死んだ人間はいます”
「高血圧とか?」
 片や筆記、片や言語で会話をするとどうしてもタイム・ラグが生じてしまう。私としては時々面倒になって投げ出してしまいたくなるのだけど、亮はその若干の空白時間がとくに気にならないらしい。むしり、私がホワイトボードに文字を書く仕草を見るのが楽しいと、前に言っていた。
”アンタの場合、糖尿病だよね”
「いやいやいや。俺の場合、俺自体が糖分みたいなもんだから」
 そう言って期間限定パイの実に手を伸ばす亮。
 なるほど、言いえて妙だ。大手製菓メーカー社長子息、その正体は甘味妖怪!……なんてキャッチフレーズ、意外と似合うかもしれない。体躯は成人男子にしてみればかなり細い体系の亮の主食は、ホールケーキ三個だとなんとも気持ちの悪い噂を聞いた事がある。それはそのまま噂だけれど、基本的に甘いものばかりを摂取している亮は噂とあまり変わらない。
”ああ、舐めたら甘そうだもんね”
「試してみる?」
”けっこうです。ていうか無理だし”
 かははは、と亮が笑った。頼むからこっち向かないでくれよ、と心の中で思いつつ、ティッシュを取る。文字を見せ終わった後にいちいち消してないと、インクがこびり付いてなかなか消えなくなるのだ。
「そりゃいまの状態じゃあな。誰にやられたんだっけ? 伊藤? シュバイツァー?」
”ザック”
 と固有名詞を書いて見せれば、亮は冷蔵庫にかけた手を止めて、口を歪めて、顔の筋肉総動員で嫌そうな表情を表現した。
「げえー。ハナの兄貴かよ」
 頷いてみた。亮は手をかけていた冷蔵庫から離れ、ベットの傍らに陣取った。なんてパイプ椅子の似合う金持ちなんだ、と思う。
「なあ、」
”口に付いてるよ”
 翳したホワイトボードを見て亮が口元に手を当てた。
「あ、おう、サンキュ」
 ぐいっとなんとも男らしく手の甲で口元を拭い、亮は姿勢を正した。
”\(*●▽●*)/”
「いや、意味わからんし」
 まあ、意味ないし。
 ただ書いてみただけの顔文字をティッシュで消して、続きの行為は中断された。新しく書き直そうとした私の手を取って、亮はため息を吐く。真剣な顔つきは、亮には似合わない。
「話したくないのはわかるけどさ、俺ってお前の幼馴染なわけよ。でもって心配なんてものをしちゃってるわけですよ。だからこれ以上お前さんが傷つくのを見たくないっていう気持ちがあるわけでね」
 はいはいはいはい。続きはわかってますよ。だからそれ以上は……言わないで欲しい。
 そういう気持ちを前面に押し出して亮を見る。亮は私の方を見ていない。きっと私の目を見て私が何を言わんとしているかを悟るのが嫌なんだろう。なんて卑怯な奴だと思う。でもなんて優しい人なんだと思う。
 亮は私の手に額を寄せて、まるで祈るようなポーズで言った。
「ザックといれば、お前はきっと不幸になる」
 最悪だ、と思った。思わず細める目を亮が見ることがないことが救いか。ため息が吐きたい。
「頼むから、ザックは、ザックだけはやめとけ。他ならいいんだよ、アルベルトとかリナトとかヘギュンとかさ」
 なんで全員カタカナの名前なんだろう。白人に血統が多いという話は聞いた事があるけれど(純血種の吸血鬼や狼人間が最も多いのは白人種だからだ。しかも純血種というのはイコール血統種。古き良き貴族や王族など、とかく金持ちばかりだ)その関係だろうか。まあいいや、そんなことはあまり関係ない。彼らがこれから話に関わってくることもないだろうし。
「たださあ……ザックはやめとけ?」
 と、上目遣いで顔を覗き込んで来る。そんな捨て犬のような目をされても、感情というものは自分で制御できないから感情というのであって、それに「危ないからやめとけ」なんていうのは人の好奇心を最も刺激する言葉だ。
 私は首を横に振った。
 やんわりと亮の手を私のそれから外すとホワイトボードを手に取る。キュキュッと音を立てて私は文字を綴った。
”ザックが好きなの”
 赤い文字で”好きなの”なんてどこか情熱的で、なんだか違和感がある。ザックのことはとても好きだけど、強く好きなわけではない。
 しかし、わざわざ他の色(といっても青と黒しかない)で書き直すのも億劫で、私はまあいいやとホワイトボードに綴った文字を亮に向けた。 
「…………」
 そんな絶望的みたいな顔をしないでください。と言いたいのに言えないジレンマ。ぐるぐる巻きにされた包帯が恨めしい。
「今みたいな状態が、今までに何度あったよ?」
 問われて今一度振り返ってみる。
 今回はザックにされたキスのせいで病院送り、しかも入院期間一週間で口には包帯ぐるぐる巻きで話せない。前回はザックの抱擁が原因で中身カラカラの骨を折られて全治二週間。その前はザックの八つ当たりで腹部裂傷……なんだか思い出して情けなくなってきた。
”五?”
 わざと、入院回数のみを記す。
「入院はな。入院しなかったけど病院送りになった回数も数えると総計十七回」
”よく数えてるね”
「毎回毎回、病院に連れてきてるの誰だと思ってる? 嫌でも覚えんだよ」
”別に頼んでないのに”
「うっせー」
 そういって亮は私にデコピンをかました。
 笑えない口でくすくすと笑うと、亮はほっとしたように息をついた。そうして見舞い品の山に手を伸ばす。よかった、復活したみたいだ。
「まったく、ザックといいリリスといい、どうしてDPにゃロクな奴がいないかね」
 がさりとスナック菓子を手に取って豪快にパーティ開け。私は食べれないのに、コイツ。わざとやってるわけではないのだろうが、それでも疑ってしまうのは許して欲しい。
「そういや、リリスもこの病院だよな」
 二、三枚重ねて口に放り込む。バリバリと威勢の良い音を立ててスナックを噛み砕き、床を指差して亮はそう言った。
”そうなの? ていうか、もしかしてまた?”
 降って沸いた友人の名前に私は首を傾げる。彼女も一体何度目だったろうか、こうなってくると先の亮の台詞に頷いてしまいそうになる。ロクな奴がいない、か。
「そうそう。ここの外科部長さん、俺の親父の知り合いでな。DP救済委員会とかいうのの会員さんなんだって」
”へ~”
「だからほら、この病院別棟あるじゃん。あそこ精神科の病棟だって言われてるけど、ホントは自殺したDPの収容所なわけ」
 収容所とはなんて酷い言い草だろう。まるでDPが悪いみたいじゃないか。そう思って亮を睨みつけたら、慌てたように両手を振られた。
「あ、いやごめん、言葉のアヤ。別にDPに対して差別意識持ってるわけじゃねえよ?」
 私は肩を上げて、下げた。それでため息を表現した。
「怒るなよ。……とにかくさ、DPの治療はDPの医者にまかせた方がいいって話」
 とにかく、の使い方を間違っている気がしたがあえて突っ込まなかった。いちいち書いていたらキリが無い。
 私は白いシーツを何気なしになぞりつつ、亮の話に耳を傾けた。
「DPの病気は難しいからな。確実な治療法もないし、変に間違うと余計悪化して他人を巻き込んで自害することもあるらしい。――俺はお前に死んで欲しくないんだよ」
 話が戻った。心の中で舌打ちする。
「とくにザックはほら、サドだし。楽しそうに人殴るし」
”ま、それはそうだけどね”
「だろ。お前が過去十回以上に渡って病院送りになってるのが良い例だ」
 そう言って亮は腕を組んだ。ふんと鼻息荒く、それでもやっぱりお菓子を食べるのはやめない。いつのまにか従兄弟が持ってきた八橋も開かれている。本当になんで太らないんだ、この男。
”でも、別れる気はないよ”
 胸の前に翳したホワイトボード。二、三秒凝視して、亮は嫌そうに八橋を飲み込んだ。
「……わーったよ、わかりました。お前のザックに対する愛は海より深いってワケね」
 八橋の包み紙を丸めて部屋の隅のゴミ箱に持っていく。わざわざ歩いて、というところに私は不安になった。次の展開は予想できる。
「わかりましたー。そんなに好きなわけね。俺の忠告も聞かないくらいね。へえへえそうですか――やってられるかよっ!」
 パイプ椅子が跳ねた。ベットの足に当たって甲高い悲鳴をあげる。
「そんなにザックが好きか。なら勝手にしろ! マジで死んだって知らねえからな。もうお前がどうなっても病院に運ぶ気もねえ!!」
 怒鳴り声が部屋に反響する。病院なのに、大声を出したら怒られるんじゃないだろうかと不安になった。
 亮は私の見舞い品のなかから栗饅頭をひっつかむと足に力を込めてドアに向かう。どすどすという擬音が似合いそうな背中に、私は慌てて近くにあったじゃがりこを投げた。見事ヒット。亮が振り返る。
「…………なんですかー?」
 小学生か、と思ったけれどちゃんと振り向いてくれるあたり亮は立派に大人である。。
 私は慌ててホワイトボードにマジックを走らせる。亮はちゃんと待っていてくれた。
”どこいくの?”
「リリスのとこ!」
”一都にいく!”
「お前、馬鹿だろ」
 ぷ、と噴出した亮がベットに近づいてくる。ここ間違ってる、と漢字の間違いを指摘する声は、ひどく優しい。
 ――だから付け込まれるんだ。
 ベットから降りる私の身体を支える手のぬくもりを感じながら、心の中で誰よりも私に優しい亮を見下す。
 でも結局、目くそ鼻くそ、五十歩百歩。私も似たようなものなのだ。だから決して、なにがあっても、私は亮を見捨てないだろう。
「痛くないか?」
 心配を表に出して訊ねてくる亮は、本当に、泣きたくなるくらい、殴りたくなるくらいにお人よしだと思う。
 私は亮の質問に首を縦に振った。怪我は痛くない。大丈夫、と言えないのが痛い。
 リリスの病室に辿り着く前に、話せるようになればいいのに。


fin
*************

いっそハロウィン部屋を作ればよかったかなぁ。
・・・というより、人様の小説見て出来上がった小説がこんな風に肥大するとは思わなんだ・・・。

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