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「まったくもう! 一体なんなんだこれは?!」

ヒステリーを起こしたカナンを、私と雄太が遠くから見つめる。
「頭ん中ぐちゃぐちゃだ!気分悪いったらないぞ!ったく!!」
 椅子を蹴る机を殴るポスターを破く。……そして結局嘆くのはカナン自身で、自分の行いに落ち込んだ彼が起こしたヒステリーに巻き込まれるのは私と雄太なのだ。付き合い始めてかれこれ11年。そろそろ勘弁して欲しい。
「ああ、もう、畜生!」
 威勢の良い音を立てて時価六百万円の陶器の皿が砕け散った。義父はそうとう怒るだろう。ああ、日本刀で肩を叩きながら犯人探しをする義父の姿が目に浮かぶ。
「ねえねえ、どうしようか」
 呆れの一色で顔色を塗りつぶした雄太が呟く。どうしようか、と言っているわりには困った様子は微塵も無い。どうしようか、という言葉は困った人間が打開策を見つけるときに使う言葉だ。私達は別段困っていないし、打開策があるわけでもない。
「放っておけば」
 私はそう言って読んでいた文庫本に視線を落とした。活字を追おうと印刷された文字を読んでみたものの、ガシャン、パリン、ガスッ……実にバラエティ溢れるな雑音に邪魔されて、結局一ページも読み終えることができなかった。
「あ、八千万」
「え、嘘」
 視界の斜め上を縦五十四センチ、横32センチの絵画が通り過ぎる。細かい装飾がなされた額縁ももちろん道連れだ。
 カナンの今のようなヒステリーは久しぶりだった。部屋を破壊しつくさんばかりの荒れっぷりは彼にしては実に珍しい。小学生のときは他人までその破壊に巻き込んでいたものだが、大人になるにつれて物だけに当たるようになったのはカナン自身、成長したのだろう。
「次の、一億するよ」
「……とめて」
 空を切って高価な花瓶が飛んできた。軽く首を捻って私が避けると、絶妙なタイミングで雄太が花瓶をキャッチする。いやはや、慣れというのは恐ろしい。
「カナンくーん、義父さん怒るよー」
 花瓶を頭に乗っけて、ひどく飄々とした声で雄太が呼びかける。それにピタリと動きを止めたカナンは、油の切れた人形の如くギギギと首を回してこちらを見た。
 泣いていた。
「あーあーもう泣かないのー。男の子でしょーが」
 嗚咽を漏らさずに静かに涙を流すカナンのもとに雄太が駆け寄る。その場に座り込んで、少しも動かなくなってしまったカナンの頭を撫でながら、雄太は眉を寄せて微笑んで見せた。
「寝ちゃいなよ。ここはお兄ちゃんが片付けとくから。な?」
 兄、とはいっても三ヶ月の差しかない。それでも雄太が昔から兄ぶっていたせいで、カナンはすっかり弟気質になってしまった。甘えたがりなのだ。泣けばすむと思っているわけではないだろうけれど、泣けば誰かがなにかしてくれる、というのは十二分に心得ているらしい。
「ほら、立って。ベッドで寝なさいっての」
 腕を引かれてカナンが立ち上がる。雄太よりも十三センチ高い身長のせいで、雄太に腕を引かれて歩くカナンはどうにも可笑しい。一見して体格が良く、恐そうに見えるのがカナン。その実、他人に対して攻撃的なのは雄太で、彼は喧嘩のやり方を知っている。
「じゃあカナン寝かしてくる。ちょっと片付けといて」
「わかったわよ、にーさん」
 わざとらしく兄を呼んでやる。半眼で睨みつけた私に対して、雄太はにっこりと人好きのする笑みを浮かべて部屋を出て行った。半ば引きずられるように部屋をあとにするカナンは、雄太がドアを閉めるときに足を挟まれちいさく鳴いた。
「……さて」
 私は音を立てて文庫本を閉じると部屋を見回した。
 豪華で細微な装飾が施された調度品の数々は、見るも無残なまでに破壊され、カタストロフィという横文字を見事に表していた。無事なのは分厚いカーテンと、さきほど雄太が受け止めた花瓶くらいだろうか。
「あれ」
 無事なものがもうひとつ目に留まった。
 座っていた大きな窓枠から離れて、部屋の隅にあるアンティークな戸棚に近づく。背丈が私の胸のあたりまでしかないその戸棚の上に置かれた、安っぽい写真立て。
「よくもまあ――」
 思わず苦笑してしまう。この屋敷にきたばかりの私達姉弟を撮った写真と、そのときに唯一各自の実の親から買ってもらった品は、カナンの荒れ様に対して傷ひとつ付いていなかった。
 写真を手に撮る。
 義父の前に整列するちいさな子供達。十年以上も前に出会った三人の子供は、誰も笑っていなかった。


fin
*******
金持ち叔父さんに引き取られた義兄弟3人組。
長男・雄一。
長女・さくら。
次男・カナン。

長女の名前はたったいま考えました。翼です。



ここのところ、パソコン開いて日記書いててそのまま寝てしまうことが多いです。
起きたらリリーさん(PC)が落ちていてデータがぶっ飛んでるという、なんとも無意味で悲しい、悲壮感に打ちひしがれる結果に終わっていますが、今日は何故か無事でした。良かったような悪かったような・・・どうせなら一昨日か一昨昨日の短編も無事でいてくれたらよかったのになぁ。


そんなわけで、日記をかけていない間ちょっと大変でした。
思ったよりもストレスが溜まっていたようで、二日連続でバイトで泣きそうになるわぶっ壊れるわといい加減ヤバいんじゃないか状態です。
次のバイトは木曜で、その次も木曜なので、ちょっとはゆっくりできるかな。
まあでも、ぶっ壊れたといっても帰って座り込んでぼーっとそのまま20分くらいしていたり、衝動的にカッターナイフ探したりそれだけなんで、自覚もあるし大丈夫っちゃ大丈夫だと思うのですが。


近況としては、お昼にイチゴのタルトを食べようとして落っことしてホイップがぐしゃっとなって悲しかったり。
バイト先の主任に「辞めたいんですけど」と言ったらびっくりされて、「本店は、秋吉さんを必要としております」と言われ、帰りに「シンキングターイム!」と言って送り出されたり。
流石に3連勤はキツかったり。朝起きたら裸のままだったり。課題がまだ出来てなかったり。


・・・4行で済んだ!!


もうね、ここまで時間経っちゃうと流石に記憶が薄れます。(泣)
ああ、でも、思ったのは、やっぱり人間余裕がなくなると攻撃的というか、人を思いやれなくなっちゃいますね。ヤダヤダ。
少なくとも、頭痛薬が必要になってくれば流石にバイトは続けられないなと。

そんな感じです。はい。


でも昨日久しぶりにビデオ屋へ行きました!
「80デイズ」と「愛についてのキンゼイ・レポート」と「2005ごくせん」を借りてきました!
コナンの鎮魂歌もごくせんスペシャルもハツカレもバイバイ、ママもどれもなかったぜい!!(悲)




今日はお母さんの誕生日です。頑張って優しくしようと思います!

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