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説得力のある台詞は、あまりにも現実感に乏しすぎた。


 家の中があまりにも暗かったので、玄関先で転んだ。
 なんだってこんなところに段差があるんだ、と何気なしに文句を言ってみたら、ここは日本だからと苦笑交じりの返事がリビングから聞こえた。
「来てたのか」
「洗濯にね」
「なんの」
「心の」
 小倉はテレビ画面から目を逸らさずに答える。彼はいつも言葉が足らない。主語を抜かして話をしてしまう人間はたまにいるが、目的語のみを用いて話すのは流石に小倉くらいものものではないだろうか。こちらが懇切丁寧に言葉の意味を補う語を引き出してやらないことには、まともな会話もできやしない。何度注意しても直らないから、キリストよろしく慈悲深く、忍耐強く付き合っていこうと決めた。
「なんで電気付けてないんだよ。目ぇ悪くなるぞ」
 ソファにカバンを投げ置いて、ネクタイを弛めながら小倉の視線の先を見る。有料チャンネルで徐々に下着を剥いでいく少女が、まだあどけなさの残るはにかんだ笑みを浮かべていた。
「眩しくてさ」
「電気が?」
「そう、電気が」
 だから点けないで、という小倉の頭をがしがしと掻き回し、キッチンへ向かう。冷蔵庫にあったはずのファンタが、シンクの上で空のペットボトルと化していた。帰りにコンビニ寄ってくればよかったと後悔するも、いまさら家を出るほどファンタが飲みたいわけでもなく、冷蔵庫に並んだミネラルウォーターの一本を引き抜いた。
「なにかあった?」
 リビングへ戻り、ソファの背に腰掛ける。何故だかソファの前に膝を抱えて座ってる小倉は、胸を曝け出した童顔AV女優を胡乱な目で凝視している。
「なにもない人なんて、いないでしょ」
 小太りのブラウン管は、六本木のマンションには非常に不釣合いだ。けれどどうしても捨てられないものだから、不細工にも薄型プラズマテレビの前に鎮座させている。最新機器と、2007年には寿命がくる老いぼれ家電製品。最早どっちがオブジェだかわからない。
 小倉の声は形の良い尻の映像に溶けて消えた。痩せすぎなくらい細い腰から目を離し、黒いカバンの中から仕事の書類を取り出して見ればとても見辛かった。もとより目が良いわけでもないのに、これじゃあなにもできやしない。
「電気点けるぞ」
「駄目だよ」
 慌てて振り返った小倉は、勢いソファに手をついて不自然な格好になった。困った顔をして見つめてくる小倉の後ろで、童顔AV女優は白い下着一枚の格好で上目遣いにカメラを見つめている。二人の顔は、とても良く似ている。
「なんで」
「見えちゃうから」
「なにが」
「俺が」
 お願いだよ、と懇願するように顔を歪める小倉を無視して、リビングの電気を点ける。暖かな色をした電球が、優しくリビングを露わにした。
「……どうしたんだよ」
「だから嫌だって」
 傷ついたように笑う表情は諦めと憔悴でデコレーションされている。その顔におまけとして付属しているのは絆創膏とやや黄ばんだガーゼ。蛇足として長袖Tシャツに隠れた腕も膨らんでいるように見える。
「なにがあったんだ?」
 こんな姿を見てしまったらもう仕事どころじゃない。手にしていた紙の束をダイニングテーブルに置くと、プラズマテレビの横の戸棚から救急箱を取り出す。小倉に向き合うと、泣きそうな顔で後退された。
「いい、いらない」
「なんで」
「……怒られるんだよ」
「誰に」
「母親」
 無意識にだろう、押さえた左腕は膨らんでいるかのように思われた箇所だ。強引に詰め寄り長袖を捲れば、やはり真っ赤に腫れていた。
「DV?」
「まあ、そんなとこ」
 一度見られてしまえば諦めがつくのか、小倉は大人しく腕を差し出して座った。きっと家を帰る頃に剥がせばいいと思っているのだろう。それでも、やらないよりは良い。救急箱の中から湿布を取り出し患部に貼り付けると、ほっとしたようなため息が小倉から聞こえた。
「抵抗とか……しないわけ」
「理由がないじゃん」
「どこかだ」
「いって!」
 処置ついでに小倉の頭を軽く叩く。予想外にでかいリアクションに、俺は引きつった笑いを浮かべるしかできない。
「病院行くか」
「それだけは勘弁してよ!」
 両手を合わせて顔の前に突き出した小倉にため息ひとつ吐いて、頭を抱え込む。痛い、と声を上げる小栗を無視して髪の間を見てみれば、2箇所にこぶができていた。なんだって、こんな。
「氷出すから」
「……ん」
 救急箱の蓋を閉めてキッチンへ向かう。ダイニングテーブルに放置された書類には、いつになったら向き合えるのだろうか。
 振り返る。小倉はテレビ画面を見つめていた。
「それ、直しといて」
 小倉の背中に声は届いたのだろうか。少しも微動だにしない様子が不安を煽る。小栗。名前を呼んだら、微かに肩が揺れた。
「綺麗じゃんね?」
「は?」
「肌」
 と、童顔AV女優の作り笑いが画面いっぱいに映りこんだブラウン管を指差す。とうとう生まれたままの姿になった少女が、ベッドの上で笑っている。小倉とよく似た笑い方だ。可哀想だ、と思った。
「これが傷つくなら、俺が傷ついたほうがいいじゃん」
 振り返った小倉が笑う。
 悲壮と憐憫をその顔に見つけて、俺も笑い返した。
「ちゃんと直せよ」
 放置された救急箱には、二人とも見向きしなかった。


fin
*****

長っっ!!
これ日記で書くより短編に載せたほうがいいのでしょうか。
気が向けば移動させます。とりあえず夜が明けそうだ。

昨日はバイトのことくらいしか覚えてません~。
とりあえず、何故か入れたシフトが全部3時出勤になってたり、お客さんにとっても素敵なシャツを着た人が居ました。紅葉が散ってあって、右肩のところに般若の顔がプリントされてるシャツ。いいなぁ、あれ。僕も欲しいな。


今日は朝お風呂に入ったらものすごく遅刻し、しかも時間割を間違えていまして(汗)
行ったのが2限目終わる30分前て!しかも出席カードを通し忘れるって!・・・まあいいか。(よくない)

学校の帰りに、手芸屋へ行ってテディベア製作のキットみたいな、セットになってるやつと、リボンを買いました。
いやあテディベア作るのって大変なんですねぇ。セットみたいなやつは5000円以上しました。これうまくできなかったら嫌だなぁ(笑)
といえず、明日バイト終わってからでも、時間見つけてちまちまやりたいと思います。



うあーもう寝ます!
てか四時じゃん!今日は珍しく夕寝したのですが、明日起きられるか不安です!

ではおやすみなさい!!

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