道頓堀を船は行く 見知らぬ人とデートしてきました。いや母の知り合いからの紹介なのですが。大阪で東映映画見てからカラオケして飯くって帰るという不思議なデートコース。ちょっと楽しかった。ただ知らない人と11時間ふたりきりなのは地味にクるものがあり。しばらく知らない人と話すのはいいやーというダメっぷりです。一度にガッツリなにかするとしばらくなにもしたくなくなる。なんだこれただの燃え尽き症候群か。 -----「ただいま」 少年はうんざりした顔で門を抜ける。アーチ状になった薔薇の香りは訪問者を喜ばせるが、帰宅した少年にとってはあまり喜ばしいものではなかった。 薔薇の香りは家の香りだ。柔らかな笑顔と美味しい食事。そして後継者としての重責が少年の肩にのしかかる。このままでは肩凝りで死んでしまう、そう少年は思った。「どこで油を売ってやがったんだ殺すぞクソガキ。普段役に立たねーんだから定時に帰ってくるくらいの義務は果たせクソ野郎」「ア、アルマ?!」 ぞんざいな口調を聞いて少年は驚いて俯いていた顔を上げる。しかし目の前には誰もいない。「あれ? アルマ?」 きょろきょろと辺りを見回す少年。その後ろから「この俺様が見えねえクソ目玉なんか抉り落としてやろうか?」という言葉と共に後頭部に思い打撃を受けて少年は地面に沈んだ。「チッ。こんなもんも避けられねえのかよクソが」 少年の頭があったところには、ちいさな人影が浮かんでいた。黒のタートルネックの上から片方の肩と胸を保護する簡素な鎧を身につけ、足元はボロボロのジーンズに軍靴という井で立ち。 ただその人影は異様に背が小さく。 また人間にはないはずのものがその背中についていた。 空中に浮かぶ人物の身長はわずか15センチメートル。背中には半透明の羽が4枚小刻みに動を繰り返している。不機嫌そうな顔で腕を組み、アルマと呼ばれた男はその胸を膨らませるほど息を吸い込むと全力で叫んだ。「おいクソガキ共! 我らがピーター・パン様のお帰りだ!!」 その瞬間、門に咲いていた薔薇の葉が揺れた。ビリビリと空気を振動させるほどの大音量で、アルマの声は一直線に建物の中に入っていく。 一瞬の静寂。しかしすぐに静けさは破られ、どたどたと大きな足音をさせながら建物のなかからちいさな人影が出てきた。「おーかーえーりー! ピーター!」「おい、アタシの肉を取っていくな、泥棒め! ピーターそいつ捕まえろ!」 建物のなかからソーセージをくわえたまま、 脂肪による豊満な肉体を揺らしTシャツ姿の男が走ってくる。その後ろから赤髪のふたつに結わえ太った男を追いかける幼い少女の姿。「あいたたた……や、やあ、ただいまスミー。それにリ――ぶへえっ!」 どすっと音を立てて太った男――スミーが少年の上にのしかかる。「おかえりピーター! 今日はリトル・ウェンディが来ているよ! やっぱり彼女のクリームシチューは最高だね!」「わ、わかったからスミー、ちょっと僕の上から降りて……げふっ!」「てめえアタシのソーセージ返せ! ていうかなんでわざわざアタシの皿から取っていくんだよ?!」「だってぇ……ソーセージの乗ったお皿遠かったんだもん……」「もん……じゃねーよかわいくねーし! さっさとそのソーセージを返せー!!」「ふ、ふたりとも……お願いだからそこをどいて……」 地に伏していた少年にのしかかったスミーと、彼にとびついたリリーがひとつのソーセージを巡って争いを繰り広げる。巨体と、さらに幼いとはいえひとりの女の子に乗られた少年が潰れたカエルのよう悲鳴を漏らす。零れ落ちる涙。そして、止まる呼吸。「うるっせえんだよこのクロガキ共が!! さっさと食堂に戻りやがれその頭部はがして脳みそ吸ったんぞゴラァ!!?」 アルマの一喝にそれまで言い争っていたふたりがピタリと動きを止める。そしてそそくさと少年の上から退くと一目散に建物の中に入っていった。 スミーの「ピーターが帰ってきたよぉおお」という叫びが建物の奥から聞こえてきた。「オイ。てめえもいつまでも潰れてんじゃねえんだよ立てやコラ。薄幸の美少年でもなければ薄命の美少年でもねえだろ。オラ、立て。いますぐ立て。さもないと殺す」「……ひどいや……」 涙ながらの呟きを零しながら、少年はのろのろと立ち上がる。さっきまでは綺麗だった制服は泥にまみれ、顔も汚れてしまってた。「さっさと飯を食って来い。それが終わったらいつものランニングだ。太陽が4つも昇ってやがるんだ、さっさとしろ」「ねえ、アルマ。まだ僕がピーター・パンになると決まったわけじゃ……」「つべこべ言ってんな犯すぞ。俺様は先にいくから、1時間ですませろ。いいな」 そう言うと、アルマは少年の返事も聞かずに建物の中へと入っていく。それと擦れ違いに、建物のなかからゆっくりと人影が歩いてくる姿を目にして、少年はほっと息を吐いた。「お帰りなさい、ピーター」 少年の顔を見とめ、建物の中から出てきた女性は微笑む。 落としていた鞄を拾い上げて、少年はまっすぐに歩いていく。そうして黒髪を揺らした女性と同じような微笑みを浮かべた。「ただいま、タイガー先生」 *****Title of "Tiger MAMA."to be continude...? [0回]PR